今日はレイバーデー(Labour Day)で祭日である。CALLの課題を仕上げて、明日の昼までにアップしないといけない。これが終わると、ひとまず2学期の全ての課題が終わることになる。
これはこの前の骨董市のときの話なのだが、私がガラス越しに装飾品をのぞいていた際に、隣にいた夫婦の女性の方が「これ、インローよ」と、銀色の展示品を指しながら言った。
印籠は薬箱程度の意味だろうけれど、インローって日本語だよねと思った私は、’The word, Inro, has already been Anglicized?’(「インローってコトバは、すでに英語になっているの」)と、全く見知らぬ人に聞いた。日本じゃ、見知らぬ人にこんな話を切り出すことはめったにないから、私もすでにかなりの程度までにニュージーランド化しているのかもしれない*1。
それから印籠談議が始まり、もちろん印籠の話より別の話が中心になったけれど、話が途切れることはなかった。
話が延々と続いたのは、おそらく異国での生活で私が誰か話し相手が欲しかったのと、おそらく彼女が日本のコレクションに興味があったからだろう。
そこに旦那さんが再び登場して、挨拶をし合うと、また延々と話が続いた。大体オセアニアやニュージーランドは、このノリだ。全く知らない人とも平気で話が始まる。
このジュディス(仮名)とヘンリー(仮名)は、スコットランド系らしく、「先ほど、スコットランド系の結婚式を見たばかりです。結婚式、見ませんでしたか」と、私は聞いた。
ジュディスに「ニュージーランドの英語はわかりにくいでしょう」と言われるが、「いや、私としては、基本的にイギリス語というものが、よくわからないわけで」と話すと、おべんちゃらを言う夫婦には見えないのだが、夫婦で、「いや、私たちの中でなら、あなたの方がずっとイギリス語が上手だ」と、私を驚かせるようなことを言う。
私が質問したわけでもないのに、ジュディスは、ニュージーランドは基本的に安全だけど、小さな物取りは頻繁に起こるから気をつけてと注意してくれる。
ここのハミルトンガーデンでも、「鍵をかけないと取られます」(Lock It Or Lose It)という警察の警告案内を見かけるから、結構小さい物取りはあるのだろう。車の鍵をかけなかったり、カメラなど高価なものを車内の見えるところに置いておくと、泥棒にアピールすることになるから、気をつけてという警告だ。
「異国での生活はさぞや大変でしょう。お友達はいらっしゃるの」と、ジュディスは親切だ。日本なら、余計なお世話と映るだろうけど、そう考えてはいけない。これは普通のことなのだ。何しろ、彼らには他人を気づかう時間的余裕がある。もしかしたらニュージーランドの生活が静寂すぎて、刺激が少ないということも手伝っているかもしれないけど。
たまたまアメリカ大統領選の話にもなったのだけれど、彼らは、マイケル=ムーアの映画も見ていた。私が、「わたしも見たけど、遅い時間帯しかやってなくて、夜の9時ごろから見ました。夜の9時っていったら、ニュージーランド人はもう寝ている時間でしょう」と言うと、ジュディスが「私はまだ寝ないけど、9時過ぎに寝る人は多いから、9時以降電話はできないわね」と、言う。
イギリスのトニー=ブレア首相もそもそもは労働者の見方のはずじゃなかったのという話になって、私が、「アメリカ大統領選も、オーストラリアも、日本も残念ながら政治的な選択肢の余地がない。メディアもバイアスがかかっていて、事実をきちんと報道しない。だから戦争賛同者ばかりが指導者になっている。私はここの政治に責任を持っているわけでもないし、実際よくわからないけど、その点、まだニュージーランドの方が選択肢があるようですね。この前のニュージーランドの各市長選でも、かなりの変化がありましたしね」というような話をした。さらに続けて、「そもそもニュージーランドは、女性が元気ですから」と私が言うと、この旦那さんはヘレン=クラーク首相がお気に入りのようで、労働党支持者だった。
私から言わせれば、ニュージーランドは、こうしたごく普通の労働者としての市民感覚がある。どこぞの首相のように、国民の声に全く耳を傾けない姿勢のもとでは、国民や市民はしらけるばかりだ。
それに、見知らぬ人とも平気で政治の話ができる。私が勘違いしているだけなのかもしれないが、少なくとも、こちらが政治議論を持ち出しても、無視せず、必ずと言っていいほど、対応してくれる。意見が違うなら違うで、彼らは自分の意見を言うだろう。
バラの季節の到来を心待ちにしている私としては、バラの季節はまだかと思って、ジュディスとヘンリーと別れてから、骨董市の会場を後にして、ローズガーデンの方に行ってみた。けれども、残念ながら、まだバラの季節には早すぎるようだった。