日本円と日本語はどれだけ世界に通じるのかね

 コトバが喋れなくても、お金を持っていれば大丈夫。事実、お金が喋る(Money talks.)という表現がある。シェイクスピアではないけれど、お金とコトバのアナロジーは古くからある。つまり、流通ということではお金もコトバも共通で、どれくらい通じるかということが大切なのだ。
 テクニカルに言えば、日本語が世界に通じないのと同様に、日本円がいくら強いといっても、日本円では世界に通じにくい。
 日本という狭い国土に、多くの人口を抱えるわが祖国は、だから、日本円と日本語の肥大化した社会だ。一歩外に出ると日本語も日本円も通じないけれど、国内だけでも、巨大な市場があるという状態である。
 それで、外というと、アメリカ合州国ばかりを見ている。もっと具体的にいえば、それがアメリカドルとアメリカ英語に他ならない。
 経済の素人が口を挟むレベルではないけれど、日本円と米ドルが関心事にならざるをえないのは、それなりに理解できる。コトバの問題でいえば、母語としての日本語に、プラスして英語をやらざるをえないのと同様のアナロジーだ。しかし、世界は日米だけでまわっているわけではない。それから、何度もこれは書いているように、無批判的米国追従は危険である。これからの時代は、世界のあらゆる人たちと仲良くやっていかないといけない時代だ。だから軍隊に金をかけるよりも、コトバの教育を豊かにして、交流していかないといけない。
 そもそもコトバが多少できたって、コミュニケーション障害というのは起こるものだ。コトバもできなければ、何をたよりに意思疎通をはかれというのだろうか。
 だから、これからは多言語主義でやっていかないといけない*1
 外国語教育も選択性にすべきだ*2。それが日本の利益にも合致すると思う。
 これからは世界のあらゆる人たちと仲良くしないといけないというようなことを書いていたら、中国での日本の人気の無さが読売新聞で報道されていた。
 「日本に対する親近感調べが主要テーマで、『親しみを感じない』が31・2%、『まったく親しみを感じない』が22・4%に上り、親近感なしが過半数の53・6%を占めた。一方、『親しみを感じる』『非常に親しみを感じる』はそれぞれ5・4%、0・9%に過ぎなかった」という。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041124-00000112-yom-int
 さらに、中国の胡錦濤国家主席小泉首相靖国神社参拝の中止を求めたことに対する小泉首相の対応についての産経新聞報道*3。「靖国以外に重要な問題は日中間にたくさんある。大局的見地から、一つ二つ、お互い都合の悪い問題や摩擦のある問題が起こっても、日中関係全体の発展のため支障にならない関係にしていきたい」と小泉首相は述べたとあるけれど、こうしたコメントで果たして論理的にかみ合っているのだろうか。
 私の観察では、最近の日本のメディア報道の基本姿勢にはかなり問題があって、報道の内容の質も量も制限されている気がしてならない。本来は、母語の日本語だけでも、充分に情報がとれなければいけない質と量とがジャーナリズムには求められているはずだ。
 もちろん、他の先進国といえども、ジャーナリズムに偏向(バイアス)がかかっていることは言うまでもない。しかし、そのバイアスが特に日本はひどすぎるのじゃないかという印象を私はぬぐえないのだ。
 だから、本来は日本語だけで充分に情報がとれるはずなのに、大事なことが知らされずに放って置かれている状態が今のわれわれの状態のように思える*4
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041124-00000003-san-pol
 さらに日本語力低下を憂える新聞報道*5
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041124-00000000-san-soci
 低学力問題は、相対的なもので、この新聞報道だけでは、簡単にコメントできる問題ではない。また、その原因の分析も皮相的な印象はぬぐえない。けれども、日本は自分のコトバも大事にしていないという、その低レベルさに言葉も出ない。
 今の日本は、隣人にすら好かれない。
 コトバによって交流をはかろうという基本戦略もない。
 日本は、こんなんで本当にいいのだろうか。

*1:日本語と英語はもちろん、その上で、各国の情報が充分取れるようにコトバの専門家をもっと増やすべきで、英語の偏りは、日本にとっていい結果を生まないだろう。イラク戦争だって、現地の情報がほとんど知らされていないのではないだろうか。

*2:ひとつのコトバを文化といっしょに身につけようと思ったら、想像もできないほどの長い時間がかかり、それはライフワークに近い視野で考えるべき問題になる。そうした性格のものを選択性にしないというのは、個人の自由意志を尊重しないといけない民主社会において、問題がありはしないだろうか。

*3:産経新聞を購読したことは私は全くないけれど。最近はインターネットのおかげで、幸か不幸か、アクセスできてしまう。

*4:アメリカ合州国だって、バイアスはひどい。こちらのFOXチャンネルなど、イラク戦争の報道ばかりで、その報道量たるやすごいものがある。アメリカ人の知人によれば、このおびただしい戦争報道量は、homeland and securityをテーマとして、つまり、危険性を煽る目的で流されているという。アメリカ合州国は世界の警察にならないといけないと扇動しているというのだ。もちろん、比較の話に過ぎないが、その知人は、イラク戦争に関していえばBBCの方がバイアスは少ないのではないかと言っていた。私の観察では、今の日本のマスコミの報道の質と量は、残念ながら、お粗末すぎて話にならないレベルだと思う。そのことを知る意味でも日本人は英語をやった方がいいとさえ思えるほどだ。

*5:産経新聞を、再度引用するのは気が引けるけれど。私も何人か個人的に知っているが、いま日本語を真剣に学んでいる学習者でいえば、非日本人学習者の方が緊張感が高いのではないだろうか。外国語学習の面白いところは、コトバを自由に操れないがゆえに、コトバに対しても文化に対しても、意識的になるということがある。これは自分の経験からいっても、外国語学習の効用のひとつだろう。よく言われる非難として「話せるようにならない英語教育」というのがあるけれど、一面では、話せなくたって外国語教育の意義はあるのだ。