アメリカ合州国の危うさに追随する日本とニュージーランドの安全性

 床屋に行ったはずだったが、いい床屋が見つからずに、居候している家に帰った際、トニーに、「この辺に、いい床屋さんはないかなぁ」と聞くと、ちょっと長髪で、丸く縮れている髪をしているトニーは、「聞く相手を間違えているね」と言った。トニーは、格好など、あまり気にしない男なのだ。
 サッカーの練習を2つやってきたトニーとケビンは、調子がよかったらしく、上機嫌だ。
 ジェニーは今日はタップダンスということで、彼らと三人で近くのモールに行き、買い物と食事を楽しんだ。
 食事の会話の中で、イエローストーン国立公園の話になったのだけれど、私もイエローストーン国立公園の入口までは行ったことがあるのだが、残念ながら時間がなくて中に入ることはできなかった。ここは動物も豊富だが、火山地帯なので、ニュージーランドのロトルア並みの驚異的なところらしい。
 トニーとジェニーは、その昔、ニュージーランドを一ヶ月以上、キャビンカーでまわったことがあるのだが、何と言ってもダニーデンがトニーのお気に入りのようだ。
 ドイツで生活したこともある大のビール好きのトニー*1によれば、アメリカ合州国のビール、バドワイザーに出会って、ビールを飲むのはやめたらしい。
 ダニーデンのビール、Speigh'tはとてもうまいビールで、「これ、抜群にうまいビールだね」とダニーデンのあるパブで言ったとたん、地元民が、「お前、話がわかる奴だな」と寄ってきたという。
 ビール好きのトニーのコレクションは、なんといってもビールグラスである*2
 トニーの話では、クイーンズタウンミルフォードサウンドトラック*3も素晴らしかったけれど、ニュージーランドの自然は、あちこちがミルフォードサウンドトラックのようであることが驚嘆すべきことだという。
 ニュージーランドは、カリフォルニア州くらいの大きさの島国に400万人の人口しかいない。
 ニュージーランドは、殺人で死ぬ率が極端に低く、安全である。「銃社会合州国で一時間に死ぬ確率といったらすごいものね」と、11歳のケビンがつけ加えた。11歳の子どもに、こんなことを言わせるとは、さすがにアメリカ合州国である。
 大変残念なことにと私はあえて言うが、日本もニュージーランドと同様に安全な国だったのに、イラク戦争以降、政府関係者や民間人の死亡者がかつてなかったテンポで出始めている。
 1945年以降、平和憲法下で守られていた人権と安全が、かつてこれほど脅かされた時期はなかったはずだ。それも、われわれの基本的人権と、憲法を守らないといけない政府によって、私たちの生命が脅かされているのである。
 これほど本末転倒の話もないものだ。
 本当に、日本はこんなんでいいのだろうか。

*1:トニーは大のビール好きで、冷蔵庫にはぎっしりとビールが格納されているけれど、彼がビールを飲んでいるところを見たのは一度だけ。第一に車を運転することが多いこと。それと、これはニュージーランド人もそうだけれど、彼ら一般市民は日本人のようなバカ飲みはしない。アル中問題は、一部に深刻であるけれど。

*2:あとトニーのコレクションは、iPodである。私と同じ40GBの奴を愛用し、車の中でもiPodだ。何度も同じ曲を聴きたくないというのもトニーらしい。

*3:ニュージーランドの南島にあるMilford Soundは、世界的に有名なフィヨルド地形の入り江である。フィヨルドとは、氷河がつくったUの字の谷が沈んでできた細長い湾のことを言う。Milford Sound Trackにおけるトランピングは、人数制限があり、ウォーカーの憧れの的になっている。