ジェニーの家が豪邸であることもすでに紹介したけれど、ジェニーの家は、一週間に一回くらいの頻度で、家政婦を雇っていた。彼女がまた、ヒスパニック系だった。
ジェニーの家は、ジェニーもトニーも、二人で働いているわけだが、観察していると、まず朝飯はきちんと作らない。日曜日に父親のトニーが、ワッフルやパンケーキを焼いたりするくらいだ。
昼は家族全員がいないから昼飯もつくらない。子どもたちに弁当を持たせるわけでもない。とても豪華で立派な台所があるのに、私が居候しているせいもあるかもしれないけれど、夕飯は、レストランなどの外食が多い。外食でないときは、トニーがサンドイッチを車で買ってきたりする。これは軽蔑した意味ではなくて、徹底した消費文化の生活をしていると言える。
大体、前にも書いたけど、アメリカ合州国は、「消費文化のなれの果て」だ。
ジェニーの家に来るまでに、私が泊まっていたマリオットホテルの朝食は、とても選択肢が多くてよかったのだが、食器は、全部ニセモノで、全て石油プラスティックでできたような皿やフォーク、ナイフ、スプーンだった。だから食事後は全部ゴミ箱へ捨てることになる。そして、これをさせられる私としては、大いに気分がよくない。今思い出したが、ここの朝食の片付け役などの担当者が、やはりヒスパニック系だった。
ジェニーの家では、フォークやナイフやスプーンもすぐには徹底して洗わない。
ざっと洗って、自動皿洗い機に入れておくだけだ*1。
自動食器洗い機でまとめて洗うということにも驚いたが、週に一回家政婦が来て、徹底して家をクリーニングするということにはもっと驚いた*2。家政婦が来る日は、テーブルに20ドル紙幣が何枚も置かれる。これはもちろん家政婦への報酬だけれど、家政婦である彼女に対するジェニーの話し方は、丁寧で人間的だ。長年のつき合いらしく、前は子どもの面倒も見てもらっていたらしい。
「年収1千万円では、どのクラスになる」と私が聞くと、ジェニーの話では、こちらでは年収1千万円でも中流のクラスのようだ。「年間2千万円なら」と聞くと、彼女の話では、それでもアッパーミドルくらいにしかならないらしい。
それにしても、マンハッタンビーチの夕陽をながめてから、夕闇の中をジェニーの家をめざして歩いていると、例のバスケットボールのゴールを家の前に置いて子どもたちが遊んでいたり、電動式に開閉するガレージの中に、自転車が何台もラックにぶらさがっていたりする。
私がやりたくても、スペースの関係でなかなかできなかったことが、ここでは簡単に実現している。
いやはや、アメリカ合州国というところは、すごいところだ。
なんといっても、貧乏人から高給取りまでのその幅が広いことに驚かされる。