アオテアロア(Aotearoa)とは、マオリ語でニュージーランドのことを指すというのはよく知られている。アオテアロアの意味するところは、Land of the long white cloudである。つまり、「長き白き雲の大地」ということである。
ニュージーランドで、何が一番好きかと問われるならば、私の個人的な意見では、なんといっても、ニュージーランドの空である。
マオリが自らの土地を、そう呼んだように、まさにニュージーランドは、アオテアロアと呼ぶにふさわしい*1。この空を見た時に、まさに私はニュージーランドに戻ってきたと実感した。
オークランド空港で、シャトルバスを予約する。
都合よくハミルトンに行くバスがあるようで、シャトルバスの客は、白人男性とアジア系の若い男性と私との三人だった。
こちらのシャトルバスは、空港から、各客の玄関先までそれぞれ送ってくれるから大変好都合だ。この存在を知らないとタクシーを使うはめになるが、ハミルトンまではかなり遠いから、タクシーを使ってハミルトンに行くような話は聞いたことがない。定期バスはあるけれども、バスの時間に合わせたり、バス停まで歩かないといけないから、かなり不便になる。大体、オークランドなら、マヌカウ(Manukau)という近くの町までタクシーでいったん出ないと、定期便のバスに乗れないだろう。
だから、このシャトルバスが、何としても便利なのである。
オークランドからグレイトサウスロード(Great South Road)を通って、ハミルトンに向かって南下する。
このグレイトサウスロードは、マオリの土地戦争のフィールドワークで何度も何度も自分で運転したから、私にとってすでに馴染みである。
マオリ侵略のために使われた軍用道路*2であるという歴史的性格もわかっているから、グレイトサウスロードという名の持つ意味は小さくない。
途中、通過するポケノ(Pokeno)、メレメレ(Meremere)、ランギリリ(Rangiriri)や、ナルワヒア(Ngaruawahia)もすでにフィールドワークで数回寄っているから、その地のもつ歴史的な意味もわかっている。シャトルバスの横を流れるワイカト川も、ここを下ったイギリスの軍艦を想像することなしに、ワイカト川を見ることはすでに私にとっては不可能になっている。
だから車内で、地名が話題になった際に、ワイ(wai)が、マオリ語で「水」を意味すること、だから水の豊かなニュージーランドには、ワイのつく地名が少なくないことを、メルボルンからやってきた同乗のオーストラリア人男性に教えてあげたりもした。
携帯電話で、彼は、彼の友人に、今晩の夕食は、せっかくニュージーランドに来たのだから、ニュージーランドらしく、羊の肉がいいなんて話をしている。同乗の韓国から来た青年は、多くのアジア系の青年と同様に、語学学校で英語を学ぶと言っていた。