「ニュージーランド物語」の第2章「マオリ」(その3)を読む

 たとえばスコットランド人の氏族(clans)のように、他の人間と同様、マオリも自分達の親族に強い結びつきを感じて暮らしていた。ファーナウ(家族)*1とともに暮らし、ハプ(亜族)*2と呼ばれる、従兄弟や他の親族とともに暮らしていたのだ。この親族の最大のグループのことを、イウィ(種族)*3と呼んでいたが、彼らは、自分達のことをひとつのグループとは考えていなかった。さらに種族があつまった集合体(the tribes)に、彼らは属していたからだ。
 この種族が集まった集合体は、ランガティラ(チーフたち)*4によって仕切られていた。普通の人々は、ツツア(tutua)と呼ばれていた。ワイカトのチーフの一人であったテ・フェロフェロ(Te Wherowhero)のような偉大なチーフたちの何人かは、全土的に有名であった。彼は(これからこの本の中で見ることになるが)最初のマオリ王となって、ポタタウ(Potatau)という名を名乗った。チーフの中には、幾人かの女性たちもいた。その中の一人は、詩人のトペラ(Topera)で、彼女は、これも有名なチーフの一人であるテ・ラウパラハ(Te Rauparaha)の姉妹の一人だった。彼女は、のちに、ワイタンギ条約(The Treaty of Waitangi)に署名した数少ない女性の一人となった。
 有名なチーフは、マナ*5、それは威信と権力を意味するのだが、偉大なマナを持っていると言われた。彼は、タプ(聖なるもの)*6だった。タプ(tapu)は、マオリの生活の中では重要な概念であった。クマラの畑は、タプだった。他のいくつかも同様にタプである場所があった。子どもの誕生は、タプであった。タプを汚すものは、神々によって罰せられる危険をともなった。たくさんの神々がいるとマオリは考えていたが、全ての神が友好的なわけではなかった。

*1:ファーナウは、familyの意で、マオリ語では、自己紹介の際に使う重要なコトバ。

*2:ハプ(hapu)は、subtribeの意で、マオリでは重要なコトバ。

*3:イウィ(iwi)は、the tribeの意で、マオリでは重要な概念。

*4:ランガティラ(rangatira)は、chiefsの意。日本語の酋長は、差別意識を拭い去ることができないので、ここでは用いなかった。ランガティラももちろん私が初級マオリ語で習った語彙のひとつ。

*5:マナ(mana)は、integrity, charisma, prestigeを意味するマオリの文化では重要な概念。

*6:タプ(tapu)は、sacredの意。ロトルアの南に位置する地熱地帯ワイオタプのタプもここから来ている。ワイオタプとは、Sacred Watersの意で、「聖なる水」という意味だ。