ドイツ人と日本人と同宿する

 今日の部屋の同宿者は、日本人のサトシさん(仮名)とドイツ人のカート(仮名)という二人だった。
 サトシさんは、ワーキングホリデーで、昨年の5月からニュージーランドに来ているらしい。
 カートは果物のピッキングで仕事をして少しお金を稼いで、車もなしでニュージーランドをまわっているようだ。
 サトシさんもカートも、ヒッチハイカーだから、すごい。
 サトシさんは、北島、南島のほとんどをまわっていて、コロマンデル半島だけ来たことがないので、今回日本に帰る直前に回ってみることにしたという。回った規模は違うけれど、帰国前の最後にコロマンデル半島を回るというのは私と同じだ。
 カートの父親は英語教師で、カートは数ヶ国語を話し、いまはチェコ語にも興味があるという。カートは日本語も少し話すから、本当にコトバが得意な奴なのだろう。当然英語はうまい。
 こういう奴が、ニュージーランドで果物摘みのアルバイトをしたり、旅行の斡旋をして、飛行機代を浮かして来ているのだから、われわれ日本人とはタフネスさが違うし、日本人であるならば、いわゆる教養人で恵まれた人ということで、果物摘みや、旅行の斡旋などして飛行機代を浮かしたりはしないだろう。
 押しなべて、日本人は、甘やかされていると言わざるをえない。
 第二次世界大戦から歴史的教訓を学ぶという点では、ドイツの学び方と日本の学び方とでは、比べ物にならない。ナチスに対するドイツの追求の仕方はすごいと思うと、カートに言うと、ドイツ人であることに誇りがあるというようなナショナリズム的な発言は今日でも、ドイツ人はためらっているとカートは言った。そうした繊細さは一面ですごくいいことだと思っているけれどと、カートはつけ加えた。
 ドイツ人は旅好きなのでしょうと私が言うと、旅といってもお手軽な楽しみのためだけの旅行も主流で、例えば、スペインのマヨーカ(Mallorca)というビーチには、400万人のドイツ人が、おそらくイギリス人は200万人くらい出かけているのではないかという。
 マヨーカは暖かい気候で、商売からドイツ語が通じるから、お手軽で、お腹の出た旅行者たちがたくさんビーチでビールを飲んでいる。他人の楽しみをとやかく言うことではないが、こうしたものを称して旅行好きとは言いがたいとカートは言った。
 ニュージーランドに来るドイツ人は、こうしたドイツ人と違って、少しはモノを考えている面白いドイツ人だろうとカートは言った。
 日本の武士道や、徳川300年の歴史、明治維新と近代化、西洋化、産業化、第二次世界大戦と、日本の歴史についてもカートと私は語り合った。
 カートは若いのに、しっかりしていて、なかなか面白い奴だ。