チョンプチョンプはえらい

 セラングーンの駅をおりて、私はタクシーをつかまえることにした。
 タクシーの運転手は、昨年ロトルアにも行ったことがあるらしい。
 タクシーの運転手に、「ボートキーなんかは、洒落ていて、カップルで来るなら最高なんだろうけれど、俺のように一人で飯を食いに行ってもつまらない。なんか面白い体験をしたいんで」と言うと、「わかるよ」と笑って言った。タクシー代は4ドルとちょっとだった。
 チョンプチョンプでは、店も客もひしめき合っていた。
 チョンプチョンプの前にも別のレストランが並んでいる。なかなか競争が激しそうな地域だ。
 チョンプチョンプは、ホーカーセンター(Hawker Centres)としては大きくない方だという。麺がうまそうな店の前でうろうろしていたら、中国系の店主に中国語で語りかけられ、英語で返したら嫌な顔をされた。彼は日本人をあまりよく思っていないのかもしれない。
 ただし、ここは観光旅行客が来る場所ではないが、基本的にみな友好的だ。おそらく、この店主だけ日本人に対する悪い印象があるのだろう。
 席だが、店の前に座らないといけないということではなくて、勝手に空いている場所に座って、店に出向いて注文し、自分の座席まで食べ物を持ってきてくれる。持ってきてくれた時にお金を支払うシステムのようだ。
 飲み物専門店のような店があったから、私はシンガポールで定番のタイガービールを注文した。
 私の座席まで持ってきてくれる。630mlの大型のビンビールだ。
 ジョッキグラスには氷が入っている。ビールが冷えていないわけではない。私は氷を入れてビールを飲んだことがないが、暑いシンガポールでは、これが普通なのだろう。この陽気では大型の瓶でも温まってしまうから、合理的なのかもしれない。水っぽくなるという感じはない。
 ある店で、イカの野菜炒めを注文する。アサリ系の貝やマッスルもある。マッスルは7ドルもするが、ニュージーランドの癖が出て、ついついマッスルをたのんでしまった。
 これらの料理が運ばれてきて、食べてみると、実に深みのある味だ。イタリアやスペインの煮込み料理に負けない深い味わいがある。
 あんかけ風になっているのだが、ワンタンのようなものも入っている、この4ドルのイカの野菜炒めに私は深い感動を覚えた。
 ロマンチックな雰囲気に浸るにはボートキーもいいけれど、日本人旅行客はチョンプチョンプに是非とも来るべきだ。必ずやシンガポールの奥深さを味わえることだろう。
 ところで、ここの客はほとんどビールなどは飲んでいない。焼酎のような色合いのドリンクを飲んでいるので尋ねてみると、さとうきびのジュース(sugar cane juice)だという。シンガポール人は、食事の際に、お酒はあまり飲まないようだ。こうした店には、大人の男性だけではなく、家族連れ、若い女性連れ、子どもも多い。
 このサトウキビのジュースも注文してみると、辛い料理に、ほどよい甘さで、ぴったりと合う。サトウキビジュースは、シンガポールでは、定番中の定番だ。
 目配せのできるようになった中国系中年シンガポール女性に、「たくさんは食べられないんだけど、このチャオメンを是非食べてみたいんだけど」と特別に注文してみた。一緒についてきたワンタンスープはやたら辛かったけれども、このチャオメン(焼きソバ)も大変うまかった。
 私がチョンプチョンプで食べたものは以下の通り。

  • タイガービール 5.2ドル
  • マッスル 7.0ドル
  • イカと野菜炒め 4.0ドル
  • サトウキビジュース 1.5ドル
  • チャオメン 3.0ドル

 チョンプチョンプのトイレは、10セントの料金を取るが、きれいなトイレだった。
 シンガポールで食事をするなら、チョンプチョンプのようなところだ。

  • Chomp Chomp (Serangoon Gardens)

 チョンプチョンプはえらい。
 チョンプチョンプからは、タクシーも問題なくひろえて、4ドル20セントだった。