猿谷要さんの「アメリカよ、美しく年をとれ」を読んだ

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アメリカよ、美しく年をとれ

 アメリカ合州国の歴史研究家である猿谷要さんの「アメリカよ、美しく年をとれ (岩波新書)」が近所の本屋さんで平積みされているのを見つけ、早速買って読んだ。
 私が初めてアメリカ合州国を訪れ滞在したのは1981年のことだが、その後、短期間だが1992年にアメリカ合州国大西部を自動車で旅行した祭には、猿谷要さんの自動車旅行記を大いに参考にさせてもらって、メサベルデや、フォーコーナーズを回ったことがある。
 その猿谷さんはといえば、「結婚してから一〇年以上もたった私たち夫婦は、海外渡航が自由化されてから二年目の一九六六年に、やっとの思いでアメリカへの旅に出かけることになった。二人ともすでに四〇歳を少し超えていた。今の若い人たちが気軽にアメリカへ出かけるのに比べると、なんと遅いアメリカへの旅だったことだろう」と書かれている。
 アメリカの学術団体連合会(ACLS)に応募して、1968年6月から「三ヵ月間、まずハワイ大学で英語の特訓を受け」、その後、ニューヨークに移り、コロンビア大学で、「大学に近いハーレムにある黒人研究の機関ションバーグ・コレクションに何度も足を運」びながら、大学紛争の時期にニューヨークで一年間過ごし、その後、「研究期間の一年延長を認められて、南部の中心ジョージアの州都アトランタ」のエモリー大学の歴史学部で「客員研究員の生活を送ることになった」のだそうだ。
 猿谷要氏は、黒人、ネイティブアメリカン、日系アメリカ人、ハワイ王朝などの歴史研究で知られているが、先の滞在期間には「なるべく多くの土地を訪ねたり人と会ったりして、帰国後の研究のために多くの資料や文献を集めることの方がはるかに大切」と思って生活されたという。
 猿谷さんの一貫してリベラルな姿勢、庶民の目線からモノを観る視点。現在83歳であり、健康状態も万全ではないにもかかわらず、新書を書き下ろされるという情熱に頭が下がる。