寺島実郎氏の「寺島実郎の発言〈2〉経済人はなぜ平和に敏感でなければならないのか」を読んだ。
これは寺島氏のあちこちでの発言を収録したものであり、書き下ろしではないから、内容の重複が目立つ。精緻な論文スタイルでもなく、軽い読物風のものだ。
それでも、「不条理な戦争の拒否」という主旨でのアメリカのイラク戦争批判は辛辣だし、アメリカ合州国に追随する日本の外交政策の危うさ、その批判も明快だ。「二一世紀が国際法理と国際協調の世界になるという潮流の中で、日本の理念こそ一歩先をゆく論理」だと主張すべきと喝破されている。
20世紀は、日本が、イギリス・アメリカ合州国というアングロサクソンの二国間との関係を重視してきた世紀であり、「アジアの目線に立って、アジアへの共感とともに二〇世紀の日本の歴史がスタートしていたら、日本のアジアにおける位置はまるで違っていたにちがいない」と氏は夢想し、さらに日本にとっては米国との関係が重要であったから、いわば太平洋側が「表」であり、冷戦時代の日本海は、ソ連、中国、北朝鮮と、まさに「絶海の海」であったけれども、これからの「二一世紀の日本を考えるならば、この「表と裏」の感覚を反転させるぐらいの気迫で変化に立ち向かうことが必要となろう」と問題提起され、これからの時代は「親米入亜」のアジア連携が必要だと主張されている。
また、マネーゲーム資本主義に対して警鐘を打ち鳴らし、堀江貴文氏や村上世彰氏を批判し、団塊の世代に対しても、「拝金主義」と「私生活主義」から脱して社会のために力を尽くすべきだと提言されている。
「はしがき」の冒頭に、「結局、二〇〇六年は二つのことに結論をもたらした。一つは、「イラク戦争は間違った戦争だった」ということである。そしてもう一つは、「マネーゲームに傾斜した資本主義は自制されねばならない」ということである」と述べている。
これを読むだけでも意味のある本であると思う。