4号機の使用済み核燃料の加熱・崩壊は2つの偶然で救われていた

amamu2012-03-09

 原子力発電は、冷却機能が死活問題である。冷却するための水を循環させるポンプとポンプを動かす電源が重要である。電源喪失(ブラックアウト)は、冷却機能の停止を意味する。そうなれば、暴走し、炉心溶融メルトダウン)となり、手がつけられない状態となる。海辺に設置している原発は、海水を使って冷却している。除熱のために使われた高温の海水は海に流している。だから、原発は「湯沸かし器」と呼ばれることもある。
 使用済み核燃料も、崩壊熱があり、冷やさなければならない。
 昨日の朝日新聞の一面で、4号機の使用済み核燃料の加熱・崩壊は、2つの偶然によって救われたことがわかったと奥山俊宏記者が報じている。

 東京電力福島第一原発の事故で日米両政府が最悪の事態の引き金になると心配した4号機の使用済み核燃料の加熱・崩壊は、震災直前の工事の不手際と、意図しない仕切り壁のずれという二つの偶然もあって救われていたことが分かった。


 偶然のひとつは、「1978年の営業運転開始以来初めての大工事」で、「工具を炉内に導く補助器具の寸法違いが判明。この器具の改造で工事が遅れ、震災のあった3月11日時点で水を張ったままにしていた」こと。また、もうひとつは、「核燃料プールと隣の原子炉ウェルとの仕切り壁がずれて隙間ができ」ていたため、「ウェル側からプールに約1千トンの水が流れ込んだとみられること」である。
 この「二つの偶然」がもしなかったらどうなっていたのか。
 それは、首都圏避難に他ならない*1
 記事は続く。

 水が減って核燃料が露出し加熱すると、大量の放射線放射性物質を放出。人は近づけなくなり、福島第一原発だけでなく、福島第二など近くの原発も次々と放棄、首都圏の住民も避難対象となる最悪の事態になると恐れられていた。

 アーニー・ガンダーセン氏は、この朝日新聞の記事とは関連なく別のところで、「三号機の爆発はたしかに凄絶でしたが、一番の懸念材料は四号機であり続けてきました。NRCが当時の日本政府の勧告よりも広い八0キロまでの避難を提言した理由でもあります。一九九七年に行われたブルックヘヴン国立研究所の研究によれば、四号機の使用済み核燃料プールで火災が起きれば、事故から比較的早い段階からがんによる死亡件数が最大で一三万八000件も増える可能性があるのです」と述べ、「四号機のプールには炉心数個分もの使用済み核燃料が入っています。これは、一三カ月に一度点検のために停止する日本では一0〜一五年分、アメリカの原発では三五年分に相当します」*2と指摘している。
 もし、「想定外」の「二つの偶然」が起こっていなかったらどうなっていたのか、真剣な検証が求められる。
 

 
 
 
  

*1:アーニー・ガンダーセン氏は「大気圏内で行われた歴代の核実験で放出された量を合わせたほどの放射性セシウムが、四号機のプールには眠っています。原子炉は原子爆弾よりはるかにたくさんの放射能を抱えているのです。四号機の使用済み核燃料プールは、今でも日本列島を物理的に分断する力を秘めています」と「福島第一原発 ー真相と展望」の中で述べている。

*2:アーニー・ガンダーセン「福島第一原発 ー真相と展望」(集英社新書