石田秀雄「わかりやすい英語冠詞講義」

「英語冠詞講義」(2002)

 「わかりやすい英語冠詞講義」をあらためて読んだ。

 冠詞については、高校生のときに金口儀明「英語冠詞活用辞典」を入手してもなお、悩まされ続けているが、本書は、かなり役に立つと感じた。

 「冠詞とはどのような存在か」では、以下が参考になった。

 冠詞は「内容語」(content word)でなく、機能語(function word)である。そのため、「表している意味が具体性を著しく欠いて」いるため、「実体がなかなかとらえにくい」。さらに、冠詞が「どの言語にも存在するような文法項目ではなく、いわば普遍性を欠いている」。「冠詞は母語話者にもむずかしい」。

 また、指摘されてはじめて納得したが、たとえば、the の「過剰使用」(overuse)の傾向は、「とくに日本人学習者の間で顕著にみられる現象」と言われているのだそうだ。なるほど。

 「可算名詞と不可算名詞」の使い分け」では、以下がたいへん参考になった。

 (前略)その意味では、可算名詞・不可算名詞という用語よりも、名詞の可算用法ならびに不可算用法という名称を用いた方が、本来的にはより適切であると言えます。英語の名詞は、最初から可算名詞と不可算名詞とが別々に存在していると思っている学習者が多いようですが、「これは可算名詞であり、それは不可算名詞である」といったようなことは、実際の英文の中で使用されてはじめて言えることなのです。(後略)

(p.16)

 さらに「認知のあり方が可算・不可算を決める」という説明!

 「認知言語学」で、「有界性」(boundedness)という概念があるのだそうだ。本書では、筆者が「ある名詞の表している対象が境界線によって仕切られているのかどうかを意味するもの」と簡単に定義している。

 これにしたがうならば、有界的な存在として認識されるものとは、境界線によって仕切られているために、個体的、個別的、非連続的といった表現によって特徴づけられる性質を有するものということになるでしょう。他方、非有界的な存在として認識されるものとは、境界線がないかもしくは明瞭でないために、均質的、非個別的、連続的といった表現によって特徴づけられる性質を有するものということになります。(後略)

(p.17-p.18)

 この認知は「話者の解釈」が決め手であり、絶対的なものではないという指摘に続けて、筆者は次のようにいう。

むしろ言語を使用する主体としての話者の解釈が大事であり、有界的か非有界的かの判断は、対象の外見的な特徴をそのまま反映したものではなく、話者がどのようにとらえているのかを映し出したものとして見ることができます(もっとも、言語は習慣でもあるわけですから、そうした慣習からあまりにもかけ離れた使い方は、原則としてできません)。そして、有界的なものとしてとらえられた場合、最終的には、可算名詞の形で言語化され、非有界的なものとしてとらえられた場合は、不可算名詞の形で言語化されることになります。

(p.18)

 なるほど。

 それで、例文として次をあげている

I've been watching TV all afternoon. (抽象的/非有界的)

We're getting a new TV. (境界的/有界的)

 

 冠詞は、ささいな違いのニュアンスを感じなければならないところがある。以下、本書から気になった例文をメモ書き的に引用しておく。

(29) I find German grammar very difficult.

(30) I want to buy a French grammar

(45) There is hot and cold running water in all the bedrooms.

(46) A water containing no chemical is pure.

(49) When do you have dinner?

(59) It was a simple dinner, but it was good.

(51) four dinners at £ 10 per person

(52) A dinner was held to celebrate the opening of the new hotel.

(59) This is good coffee.

(60) This is a nice coffee.      (=a kind/type of)

(61) He drinks a lot of juice.

(62) Two hamburgers and two small orenge juices, please. 

(75) Traditionally, many North Americans have a roast turkey for Thanksgiving dinner.

(76) We had roast turkey for dinner.

(97) I had a boiled egg for breakfast.

(98) You've got egg all down your tie.

(44) A group of boys were playing football in the street.

(45) There's too much boy in the bathtub.

(50) John raked leaves all morning.

(51) The fall foliage was breathtaking this year.

俯瞰と拡大の具体例

 

複数固体(有界的)  連続体(非有界的)

glasses       ←→ glass (=glassware)

raindrops     ←→ rain

snowflakes     ←→ snow

hailstones    ←→ hail

leaves       ←→ foliage

trees      ←→  timber

shrubs       ←→ shrubbery

jewels       ←→ jewelry