「ベスト・アルバム2013」特集の「Music Magazine」1月号を買って、これを斜め読みをして街に出かけた。
いくつか気になったCDを買い求めるためだ。
で、自宅から電車を乗り継いで、以前よく通っていたCD屋さんに行くと、これが閉店。別の店に行くと、こちらも閉店。もうひとつ別の小売店に行くと、こちらも閉店。
デパート地下に行き、二人いた案内係の女性に、「この辺でCDやDVDを売っているお店はありませんか」と聞くと、申し訳なさそうに、でもきっぱりと案内の女性は「ありません」という返事。
えーっ。この駅は、日本全国の市区町村で人口第一位を誇る市の代表駅ですよ。
まわりを見ても、人がうじゃうじゃいる。それなのに、その駅近辺にCD屋さんが一軒もないとは、どういうことなのか。
ここ数年、私は、CDはネットで購入し続けてきたのだが、そのことを反省した。が、すでに遅い。
本屋さんも同様である。
よく通っていた店舗が閉店したり、閉店せずとも、その敷地面積が狭くなっていることに、鈍感な私でも気がついていた。
わたしは本もよく買うが、これもネットで、ここ数年買い続けてきた。これも反省するが、すでに遅い。
むかし、「インターネットはからっぽの洞窟」という翻訳本を読んだことがあったが、あの本が指摘していたことがいまの日本で着実に進行している。
あの本の著者は、自分は仮想ショッピングモールなどヴァーチャルな世界ではなく、実際の本屋に出かけて本を眺めてみたいと書いてあった。俺も心底そう思う。
昔、レコード屋に行って、大盤のジャケットを見るのが楽しかった。ジャケ買いといって、レコードのジャケットだけを見て買うことも少なくなかった。植草甚一さんもそんなことを書いていた。
音楽や書籍の店頭がなくなるということは、若い世代にとって、これは本当にまずいことなのではないのか。
たとえ買わずとも街に出かけて本やCDを眺める機会がないなんて、とても豊かな社会とは俺には思えない。
こうして一枚もCDを買えずに、俺は、人口第一位の都市の名前がついた駅から自宅へ戻るほかなかった。
そういえば、最近はCDも買わずにダウンロードして音楽を楽しむ時代になっていると、ミュージックマガジンの批評家たちも書いてたっけ。
ほんとにこれでいいの。