「東京五輪・パラのボランティア 辞退者相次ぐ 「国民が歓迎するイベントなのか」」

以下、東京新聞(2021年01月24日 06時00分)より。

 東京五輪パラリンピックの開幕が半年後に迫る中、競技会場などで活動する約8万人の大会ボランティアから、辞退者が相次いでいる。1年延期で都合が付かなくなったり、新型コロナウイルス感染症への不安があるためだ。大会組織委員会内部からは人手不足への懸念が出ているが、公式には現時点での登録者数を発表しておらず、実態が見えない。

◆「政府や組織委に嫌気が差した」
 神奈川県の大学3年桑野渚さん(21)は昨年3月、延期決定の直後に辞退した。今夏は就職活動と教育実習を控え、ボランティアとの両立が不透明だからだ。
 「スポーツが好きだし、外国人との交流で自分の英語力を試したかった」と残念そう。五輪の代わりに、別のボランティア団体の実行委員として活動の企画を担っているという。
 千葉県の大学4年鈴木南帆さん(22)は、コロナの感染拡大が深刻化した昨年12月に辞退した。高齢の祖母や医療系の学校で学ぶ妹ら、家族に心配をかけられないと決断した。
 「以前は五輪のボランティアをすることが誇らしかった。でも、コロナ禍で医療が逼迫し、困窮する人もいる中、国民から歓迎されるイベントなのか疑問が生じた」と話す。
 ボランティアの感染防止対策を巡っては、政府が昨年12月に公表した中間報告に「体調管理シートを活用し自己管理」などが盛り込まれたが、PCR検査などは今後の検討とされた。
 茨城県の大学1年の男子(20)は「具体的な対策が分からず、政府や組織委に嫌気が差した」。大学ではオンライン授業が続いており、「キャンパスに行けないのに、五輪会場に集まれというのはおかしい」と疑問を呈した。

◆組織委、登録者数を明かさず
 大会ボランティアは組織委が2018年に募集。約20万人の応募者から約8万人が選ばれた。総合運営や競技、移動、式典などの役割があり、大会に欠かせない存在だ。
 ある担当者は匿名を条件に「大会全体で何人が辞退したかは分からないが、少なくとも数十人規模の辞退者が出た競技もある。その分は追加で集めようとしたが、目標人数には達しておらず、運営に不安がある」と明かす。
 本紙の取材に、組織委広報部は「延期後の辞退者は全体から見ればごくわずかで、運営に支障はない」と話す一方、現時点の登録人数は明かさなかった。
 昨年12月には、一部の採用者に活動する競技会場や期間の追加などを依頼しているが、「人数の補充ではなく、延期に伴う運営計画の見直しのため」と説明した。(臼井康兆、原田遼)