ミュージシャンのジョン・レノン(John Lennon) と エルトン・ジョン(Elton John)。
単に名前として受け取っているだけなので、疑問に感じることはまずないと思うが、なぜ、ジョン(John) という名前が、 個人名(first name)にも、姓(surname) にも使われるのだろうか。
同じくミュージシャンで、たとえば、サイモン・ニール(Simon Neil)*1 と ポール・サイモン(Paul Simon)。なぜ、サイモン(Simon) という名前が 、個人名(first name) にも、姓(surname) にも使われるのか。
もうひとつ例をだす。
劇作家・脚本家として名高いニール・サイモン(Neil Simon)*2。
となれば、名前として、サイモン・ニールもニール・サイモンもどちらもありうる(現にある)ということだ。
実は、英語名では、同じ名前が、名(first name)と姓(surname)とに同じように使われることはよくあることなのだ。
これは、個人名が姓に変わるという現象があるためなのである。
中世において、姓がまだ一般的でなかった時代に、「John の息子」などのかたちで名前に使われることがあり、やがてそれが姓として使われるようになることがあった。たとえば、John の息子が Johnson という姓を名乗ることもあったが、その一方、John を単に姓として使うこともあった。
また、John や Simon は聖書に登場する重要な名前であるため、ヨーロッパ全体で広く使われた*3。多くの人がJohn や Simon を名として採用し、それが姓にも使われる条件を生んだと言うこともできる。
英語名におけるsurnames は、first name(名)、local name(地名)、nickname,(あだ名)、 occupational name(職業名)の4つに大別される由来をもっていると、Basil Cottle の "The Penguin Dictionary of Surnames"は書いているが、このfirst name (名)由来の姓が多く存在するということなのだ。
とくにキリスト教や古代からの個人名が家系を表すものとして姓に転化したものが多い。こうした名前が広く使われたため、姓としても残るようになり、現在でもジョン(John)やサイモン(Simon)のような名前が姓として使われているというわけだ。
英語名における姓の由来からすれば、名と姓が共通することに、なんら不思議はないのである。
*1:Simon NeilはスコットランドのロックバンドBiffy Clyroのソングライターでギタリスト・ヴォーカル担当。Neil も個人名が姓にも使われることが理解できる一例となっている。
*2:コメディを多く書いたNeil Simon の作品では"Barefoot in the Park," "The Odd Couple," "Biloxi Blues"などをよく見た。"Neil Simon, Broadway Master of Comedy, Is Dead at 91゛ - amamuの日記
*3:ヘブライ語のヨハンがもととなり、それがジョン(英語)・イアン(スコットランド・ゲール語)・ショーン(アイルランド・ゲール語)・ジャン(フランス語)・フアン(スペイン語)・ジョアン(ポルトガル語)・ジョバンニ(イタリア語)・イヴァン(ロシア語)と拡散していることはよく知られているところだろう。