「地球時代の日本人」を読んだ

「地球時代の日本人」(1974)

 梅棹忠夫「地球時代の日本人」を読んだ。

 本書は、梅棹忠夫氏の講演集である。

 たとえば「経済開発と人類学」(1968年11月)では、観光客に次いで多いのが、開発関係の人たち。外交官や商社マンなどのいわば専門職でもなく、いわば民衆の直接的接触が大規模なものに拡大しているという。外交官や商社マンは、おおむね英語一本やりで、現地のことばができる人はいない。学ぼうともしない。現地の社会・文化にたいしておどろくべき無知であることも多い。普遍主義よりも特殊性・多様性に意味のある時代。ヨーロッパを視点にして考える思考性もどうか。民族がちがう。文化がちがう。自己中心的民族観と文化観が朝鮮統治の36年間を惹き起こした。

今日、朝鮮半島はふたつの国家にわれていますけれど、どちらも日本にもっとも親密な関係にあってしかるべき国です。日本の朝鮮研究の水準は、当然世界的にも第一級のものであってしかるべきでありますが、それどころか、日本には朝鮮文化あるいは朝鮮語の研究機関さえほとんどないのです。(p.29)

 今日、日本に世界政策はない。関心が内向きで、日本は、世界におけるローカルの政権であると自己規定したかのようだが、情報センターの設置が求められているのではないかと問題提起をされている。

 「海外旅行入門」(1971年4月)はたいへん面白い。

 朝日ゼミナールの東京コース「海外旅行と私」というシリーズで、梅棹忠夫氏がトップをつとめ、本多勝一「新聞記者の旅」、堀田善衛「会議と旅と」、吉田秀和「音楽の旅」…松本清張「旅と小説」、平山郁夫シルクロードの旅」、五木寛之「世界の顔、若者の顔」、遠藤周作「聖書の旅」という豪華な顔ぶれ。

 梅棹忠夫氏の話では、「日本脱出までがたいへん」「国家とは何かを実感する」「夫婦づれのすすめ」「なるべくコッソリと」「「おかげまいり」と武者修行」「対象理解と人間形成」「人間的なマナーを」「英語のかたより」「外国語はいくつでも」「言語は現地で学ぶ」「独自の価値を理解する」「大国主義のお先棒をかつぐのは」「大衆外交の時代」「日本人バナナ説」など、興味が尽きない。京大時代の本多勝一の恩師としては梅棹忠夫ははずせないお一人と思うが、「海外旅行入門」にもその影響の片鱗を感じる。英語教師にたいしても、この「海外旅行入門」は是非一読をすすめたい。

 「国際交流と日本文明」では、「交流ぎらい」「温室そだち」「ドクター・ノーの島」などが興味深かった。

 「学術の国際交流について」も興味深い視点がたくさんあるが、紙幅に限りもあるので、今回はこの辺で。

 英語教師としても、地球時代の交流を考えるうえで、是非とも読むべき一冊。