CALLの大家の教授からのメール

 こうしたインターネットカフェで昨日メールチェックをすると、オーストラリアはメルボルンのある大学の教授からメールが来ていた。実はワイカト大学(The University of Waikato)ではなく、当初私はこの大学にお世話になるはずだった。この大学のCALLといって、Computer Assisted Language Learningという、かなり特化されたプログラムが魅力だったので、昨年応募し、2003年の11月に合格通知をもらっていた。Apology(「お詫び」)という題名だったから、私としては、てっきりそのキャンセルにまつわるお詫びかなと思ったのだ。
 多少寒いかもしれないけれど、教育と文化の街と言われているメルボルンダウンタウンには二度ほど訪れたこともあるし、あるグラマースクールを訪問したこともある。それに私にはメルボルンで教師をしていたオーストラリア人の友人もいる。大都市や大都会があまり好きではない私は、寒いメルボルンはどうだろうかと躊躇していて、正直に告白すると、多少、旧知のメルボルンをなめていた。けれどもメルボルンの深さを侮ってはいけないと考え直し、合格通知を受け入れ、学費納入のためクレジットカードの番号を相手に教えて手続きをすすめたのだ。しかし、あとでも書くことになると思うけれど、いろいろな経緯があって、泣く泣くメルボルンをあきらめたのだった。この大学とのメールのやりとりがかなりあったので、私がメルボルンに行かないことは相手はわかっているはずだったが、「石橋型」の私のこと、出発の数週前に、CALLでは有名なこの教授と事務方に、「2学期が近づいていてご承知のこととは思うけれど、貴大学には行きません」と、私の意志を明確に示したメールを出しておいたのだ。事務方の反応は予想通り、おそらくは「何を今さら」と無視だったけれど、この教授は、休暇中でもインターネット上にいて、いわゆる常時オンラインの状態なので、私のメールに対する返信はいつも簡潔で早かった。Apologyとは、相手がかなり頭を下げている感じがするから、「えっ、俺ってそんなにえらくなったの」と私は勘違いをしてしまったほどだ。ところが、メールを開けて読んでみると、メールのアーカイブ(過去のデータ)がマシンの関係で、壊れて無くなってしまったという内容であった。オセアニアは、2月に1学期が始まり、7月に2学期が開始される。彼のメールアドレスデータは無事だったようで、もうすぐ始まる2学期に来る全ての学生に「お詫び」のメールを出して、「返事が遅れて申し訳ない、歓迎します」という内容だったのだ。私はすぐに、送信済みのメッセージを呼び出して、念には念を入れて「残念ながら、今回、貴大学であなたの援助のもとで勉強することはできない」と、あらためて返信を出し直した。
 それにしても、バックアップはとっていなかったのだろうか。アーカイブが壊れたというのは口実かもしれないけれど、私のように、コンピュータそれ自身には興味がなく、できればコンピュータのメンテナンスなんて、テクノストレスを感じるのでやめたいと思っている者でも、今回の旅行のために、システムと、メールデータを、それぞれ別にバックアップをとっているというのに。コンピュータを駆使して、外国語を学ばせる指導法の大家の教授、そのメールアーカイブが壊れたというのは、冗談にならない冗談だ。
 とにかくバックアップは重要である。つくったものは必ず壊れる。コンピュータ依存症のみなさん、みなさんのコンピュータの管理者には、くれぐれも感謝しましょう。えっ、管理なんて全くしていないって、それは問題ですよ。