もちろん、新潟県の中越地震災害のためである。
90名以上の死者と行方不明者を出し、過去10年間で最悪の被害と言われた台風23号の直後の大災害である。
今回の中越地震では、死者がすでに26人にのぼっていると報道され、25日現在もまだ余震が続いているという。
山古志村を含め、小千谷市や十日町市など、計54カ所の集落が孤立状態で、雨を中心とした水害が、さらに被害を広げているらしい。10万人を超える被災者たちは、不安な毎日を過ごしているが、山間地には高齢者も多く、さらに被害を拡大させないためにも、早急な対応が必要だ。
この地震で新幹線が脱線し、毎日新聞は「上越新幹線の浦佐−長岡間にある魚沼トンネルは、路盤が盛り上がるなど、復旧のめどが立たないほどの被害を受けたらしい。脱線した『とき325号』はトンネルの破損現場を、揺れを受ける約3分前に通っており、地震の発生時間によっては大惨事になる可能性もあった」と、報道している。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20041026k0000m040149000c.html
同じく、25日の毎日新聞によれば、新幹線の軽量化に潜む危険性ということで、脱線を軽量化問題とからめて論じているが、今回の脱線事故が大惨事にならなかったのは奇跡と言ってよいらしく、「最悪のシナリオは、先頭が横を向いた場合だ。JR東日本の技術担当社員はそう明かす。先頭車両が横向きになると、後続の車両が、進路を阻む先頭車両に次々と追突する可能性がある。そうなれば、大惨事は免れない」というのが大方の見方のようだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041025-00000015-mai-soci
あの銘酒「久保田」など、日本酒の蔵元にも多大の被害が出ているようで、暮れに向けてこれから日本酒が一番売れる季節なのに、これじゃ泣いても泣ききれないだろう。
あの1995年の阪神大震災でも、被災後、水洗トイレなんかは全く役に立たなくなって、庭のある幸運な人は、糞尿を庭に掘った穴に順番に埋めていったと聞く。こうしたときに役に立つのは、キャンプ道具のようなアウトドアギアである。「便利、便利」と普段気にせず使っている水洗トイレのようなものは、壊れてしまえば糞の役にも立たない。
さらに、こういう際に、なんといっても力になるのは、地域や社会の人間のネットワークだ。そして人の心が慰められるのは、やはり被災地にかけつけてくれた縁もゆかりもない人たちの援助だろう。インターネットでも、ネットワーカーたちが実に貢献している。
誠意ある建築家や町づくりの専門家も、今回の被災に、きっと心を砕いていることだろう。
私が今住んでいるニュージーランドも火山国で地震が多いようだが*1、人口が少ないせいもあるけれど、ニュージーランドの家はたいてい平屋だ。
土地の狭い日本で、高層ビルをどんどん建てたら、東海沖地震のときなどは一体全体どうなってしまうのだろうか。
地震国日本で、どのような建築物がいいのか、専門家はきっとわかっているはずだ。
日本の悲しい現実は、いつでも「わかっちゃいるけど何もやれない」、「何もやらない」という政治の貧困に尽きる。この意味では、自然災害という側面もあるけれど、人災がそれに拍車をかけているのではないかと、意地の悪い俺は疑いたくなる。
テロ対策も大事かもしれないけれど、日本じゃ地震対策の方が、優先順位が高いはずだ。この地震対策に、政府も、地方行政も、一体どれくらいの費用をかけているのか。
独立独歩で、著名な建築家・安藤忠雄氏は、私の記憶に間違いがなければ、あの9月11日に起こったニューヨークの世界貿易センタービルが崩壊した跡地を、人工的な建築物は一切建てずに、こんもりとした塚のようなものにして、9月11日に起こったことのいろいろな意味を全世界の人たちが考えられるようにした方がいい、というような哲学的な提案をされていたはずだ。この素晴らしい提案は、残念ながら、取り上げられなかったようだけれど。
日本の政治は三流だが、とても嬉しいことは、こうした力のある素晴らしい専門家や市民がたくさんいることだ。
やはり問題は、そうした力を結集しようとする政治的指導力がないことである。やはり、日本の政治は三流か。*2
政府や地域行政の援助が全くなくても、志のある人たちが、個人やグループの決意ひとつでやっている人たちが日本では少なくない。