日本から南へ、南へと下る

南へ南へと下ってアオテアロアに向かう

 これはすでに昨夜のことだが、成田空港で、シドニー行きの便を、黒い大型掲示板で確認していたら、私の乗る便はどうやらケアンズ(Cairns)に寄ってから、シドニーに向かうらしい。ようするに、ケアンズ立ち寄りの便だということを私は初めて知った。
 カンタス航空の私が乗るこの便の乗客は、ケアンズで降りる日本人旅行客の方がほとんどのようで、私のように、日本からシドニーまで行く客の方が例外的で、少ないようだ。
 ケアンズに着いてからシドニーに行く乗客は、ほとんどが現地のオーストラリア人なのだろう。もちろん、これは需要と供給のバランスから、そうしていることで、だから今回、用もないのに、私もケアンズに立ち寄るはめになってしまったようだ。
 オーストラリアのケアンズは、もちろん、あのダイバーの夢でもあるグレイトバリアリーフのゲートシティとしての定番の町で、ケアンズまでは、日本から7時間と10分ほどしかかからないけれど、熱帯のケアンズは、今たしか雨季のはずである。
 ケアンズの南に位置するタウンズビルに長男が住んでいるジュディが、「夏の時期は雨季だから、タウンズビルには行かない」と言っていたことを私は思い出していた。ジュディとは、もちろん私がいま世話になっているホームステイ先の70歳代の女性である。
 搭乗手続きを済ませて、搭乗するゲート前のラウンジの椅子に座って搭乗を待っていると、若い日本人女性客が、大型画面のテレビでやっているケアンズの天気予報を見に行って、「信じられない、ケアンズは五日間ずっと雨だって」と連れの女性に報告していたが、雨季のケアンズの天気予報なら、そんなものだろう。
 こうして日本人旅行客を大挙乗せた夜9時15分発のケアンズ止まりのシドニー行きの便は、9時30分頃の出発となった。
 7時間10分ほどで、ケアンズに到着したが、再度同じ飛行機に乗る私も、大勢の日本人旅行客と一緒につき合って、ひとまず降りないといけない。
 隣の日本人夫婦は、五日間のケアンズ滞在らしい。
 キュランダの熱帯雨林を電車で見に行き、グリーン島に行くとのことだ。残念ながら私はまだケアンズに降りたことはないけれど、キュランダやグリーン島が、日本ツアーの定番であることは知っていた。
 「クイーンズランド州は、クロコダイルに襲われる事件などが報道されることもあるから、気をつけて下さいね。楽しい旅を」と私が言うと、このご夫婦は、「ビーチには行かないから大丈夫」と答えた。
 日本人旅行客のほぼ全員がケアンズで降りる中、私は、シドニーまで行くオーストラリア人数名と一緒に「乗り換え」(transit)客の案内板に従って進んだ。
 そういえば、ケアンズからブリズベンへと、レンタカーを使って南に下る日本人旅行客が多い関係で、その逆コース、つまり、ブリズベンから北上して、タウンズビルケアンズに向かって使うレンタカーがとても安いとアレックスが言っていたことを思い出した。つまり、ケアンズからブリズベン方面に日本人がレンタカーを大量に乗り捨てるものだから、需要と供給のバランスが悪く、ブリズベンからケアンズに乗ってくれる客を優遇しているというのだ。
 バランスの悪い需要は、値段はつりあがるし、ぼったくり業者も出てくる。需要と供給のバランスが重要だというこれは見本のような話である。
 だから、われわれ日本人も、短期に、一挙に、画一的に、旅行をせずに済めば、もっとバランスよく、低料金で旅行ができるようになると思うのだけれど。ないものねだりは重々わかっているが、まずは、長期休暇が日本人に必要であるという私の持論を再度強調して言っておかないといけない。
 こうして、成田からケアンズケアンズからシドニーへと、南へ、南へと私は下っていったのだが、日本時間からすると、ケアンズで時計の針を1時間進め、シドニーで再度、1時間、時計の針を進め、オークランドで、さらに2時間、時計の針を進めることになる。日本時間からすると、都合4時間の時差があるからだ。
 私の住んでいるキリキリロア(ハミルトン)からすれば、日本の現地時間は、マイナス4時間である。それでも、日付変更線を越えなくて済むのは、ありがたい。
 ハワイ旅行なら、時差ぼけは確実だが、オセアニアへの旅行は、睡眠不足くらいですむから、余程ましだ。
 ただ、乗り換えが多い分だけ、そのつど所持品検査をしないといけない。バックパックに入れてあるラップトップのパソコンや金属類を、乗り換えの、その都度出さないといけないことに私は大いに閉口した。