マオリにとって英語は、仕事を得るための必要手段である。
ワイカト大学(The University of Waikato)で私がマオリ語を一緒に学んだマオリのクラスメートのように英語だけしか話せない、また英語しか話さないマオリも少なくない。
マオリの生き方として、片手に生活の手段としての英語を、そしてもう一つの片手に、民族の誇りをかけてさらにマオリ語をという、いわゆる二重言語話者が当面のゴールなのかと、聞いてみた。いわばバイリンガリズムが、マオリの基本的戦略なのかと。
この質問に対して、彼は次のように述べた。
マオリ語は今やマイノリティの言語である。
だから第一段階として、マオリ語だけによる教育をめざし、その後英語もつけ加えるという二重言語という政策を考えていると。
日本にいる際に、そうした方針を本で読んでいた私は、ニュージーランドに来てからというもの、ことあるごとにマオリに聞いていた。英語を抜きにマオリ語による教育を考えているのかと。すると、トータルエマージョン学校のことに触れるマオリは多かったけれど、まず英語を捨てるという方針は、かなりラディカルな方針であるということを私なりに理解した。
つまり、マオリにとって、大言語であるイギリス語はなかなか手放せないのが現実なのだ。
だから、この国立図書館のライブラリアンの基本戦略の説明がとても新鮮に聞こえた。
マオリ語が公用語になったといっても、マオリ語を学ぼうとするヨーロッパ系白人が少ない中*1、これくらいの戦略を持たない限り、言語戦争の渦中にあるマオリ語としては、厳しい闘いを迫られることになるだろうと私は思った。
学校としては、以下のものがあると彼はつけ加えた。
- Kohanga Reo
- Kura Kaupapa
- Whare Kura(bilingual)
- Whare Wananga
マオリ語の発展を考える上で、代表的な思想家はいますかと尋ねると、「スティーブン=クリスプ(Steven Chrisp)は、その一人じゃないか」と彼は答えた。