シンガポール人の英語

 シンガポールは英語にやられてしまった国であるが、例えば、リークアンユーは、2つの帝国主義に翻弄された歴史をもつシンガポールの将来を考えて、英語を選んだと言ってもいい。
 中国系マレーシア人といっても、英語系と華語系の対立があったようで、この辺の事情は、太田勇氏の書かれた労作「国語を使わない国―シンガポールの言語環境」(古今書院)に詳しい。
 私が短期シンガポールに滞在した印象では、タクシーの運転手もあまり英語がうまくない。
 インド人は英語がうまい人間が多いのだが、インド人も最近はあまり英語がうまくない傾向もあるようだ。少し前に、あの小田実氏は、インドの独立からみて、これはいい傾向だ書いていたことを私は思い出した。
 中国人のコミュニティに入ると、中国語で話していることも多い。
 大学出は、英語がそこそこうまい。いわゆる言語エリートの英語だ。
 ただし、シンガポール人は、全体的に英語が下手でもものおじしない。
 これは、われわれとは言語環境が違うことからくる現象だろう。日本人もシンガポール人の英語に対するこうした距離感を学ばないといけない。