朝日新聞デジタル版(2015年9月19日05時00分)から。
安全保障関連法案が19日、参院本会議で成立する見通しになった。民主党など野党5党は18日、安倍内閣不信任決議案の提出などで採決に抵抗したが、自民、公明両党はこれらを否決して押し切り、法案は19日未明にも成立する。自衛隊の海外での武力行使に道を開く法案の内容が憲法違反と指摘される中、この日も各地で法案反対のデモが行われた。
法案採決のための参院本会議は19日午前0時すぎに始まった。法案を審議してきた17日の参院特別委員会で採決が混乱し、野党側は採決が無効だと指摘したが、鴻池祥肇(よしただ)委員長は本会議で「採決の結果、原案通り可決すべきものと決定した」と報告した。
その後、各党が法案に賛成、反対の立場から討論。民主の福山哲郎氏は「昨日の暴力的な強行採決は無効だ。法案が違憲かどうかは明白で、集団的自衛権の行使は戦争に参加することだ」と主張。一方、自民の石井準一氏は「限定的な集団的自衛権の行使を可能にすることで日米同盟がより強固になり、戦争を未然に防ぎ、我が国の安全を確実なものにする」と反論した。各党の討論後、採決が行われ自民、公明両党などの賛成で可決、成立する。
安保関連法案の採決を阻もうと、野党は抵抗を続けた。民主は17日夜から18日午後にかけ、参院に中谷元・防衛相の問責決議案などを相次いで提出した。決議案はいずれも与党などの反対多数で否決された。また、民主党、維新の党、共産党、社民党、生活の党と山本太郎となかまたちの5党は18日、内閣不信任決議案を衆院に共同提案したが、否決された。
安保関連法案は、武力攻撃事態法改正案など改正案10本を一括した「平和安全法制整備法案」と、自衛隊をいつでも海外に派遣できる恒久法「国際平和支援法案」の2本立て。「日本の平和と安全」に関するものと「世界の平和と安全」に関係するものにわかれる。
「日本の平和と安全」については、武力攻撃事態法改正案に集団的自衛権の行使要件として「存立危機事態」を新設した。「世界の平和と安全」では国際平和支援法案で、国際社会の平和と安全などの目的を掲げて戦争している他国軍を、いつでも自衛隊が後方支援できるようにする。
安保関連法案は、衆院特別委で約116時間の審議を経て、7月16日に衆院を通過。参院特別委では約100時間審議された。
■国会前、やまぬ「反対」
安全保障関連法案に反対する市民たちが18日も、東京・永田町の国会議事堂前や周辺に集まった。主催者発表で4万人以上。抗議行動は14日から5日連続。人波は日付が変わっても絶えることはなく、人々は「まだ決まってない」「憲法守れ」と訴え続けた。
議事堂前の幅50メートルの車道に警察車両が隙間なく並ぶ厳戒態勢のなか、参加者たちは歩道で身動きができない状態に。歩道からあふれ出し、車道の一部を埋めた。
主催したのは、市民らでつくる「戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会」。学生団体「SEALDs(シールズ)」や「学者の会」、子育て世代の「ママの会」など、法案反対のためにできた多くの団体が協力した。