「改憲の足音、公布71年 ピーター・バラカンさんに聞く」

f:id:amamu:20051228113104j:plain

 以下、朝日新聞デジタル版(2017年11月3日05時00分)から。
 記事は、お二人のインタビューだが、もう一人の方のものは割愛した。

 日本国憲法は3日で公布71年を迎える。衆院の8割が改憲派とされ、最も改憲が近づいた記念日と言えるかもしれない。ただ、熱いのは一部の国会議員や学者、熱心な運動家ばかり……。その議論、どこか欠落していませんか。海外の視点も交え、2人に聞いた。(木村司)

■改正、じっくり議論できるか注視 ピーター・バラカンさん(ブロードキャスター

 日本に暮らして40年になりますが、相手の気持ちを察し、気配りができるのは日本人の特性の一つだと感じています。ただ、別の見方をすれば、これは忖度(そんたく)。公僕である政治家を「先生、先生」と呼んでありがたがるような縦社会と相まって、権威のある人を喜ばせようとする傾向がある。

 憲法改正は最後は国民投票で決めますが、こうした国民性のもとでは、権力者の都合のいい改憲につながるかもしれません。

 英国では昨年、欧州連合(EU)離脱を問う国民投票があり、離脱派が過半数を占めました。市民は、EUに多少の不満はあっても現状維持を望んでいたでしょう。でも、政権が国民投票を提案すると、一部の人が声をあげ、メディアが取り上げた。デマも飛び交って、一般市民もだんだんあおられていったのです。

 日本での憲法改正国民投票は早ければ来年。でも現状はどうでしょう。自衛隊南スーダン派遣では存在する日報がないと言われた。衆院解散は野党の混乱を計算したもので、有権者にじっくり判断してもらう姿勢とはいえない。北朝鮮情勢で政治家もメディアも、あおるばかりです。

 国民投票は究極の民主主義です。9条は世界に誇るべきものだと私は思いますが、徹底的に議論して改正多数となればもちろん尊重したい。ただ、今のままでは心もとない。判断材料は示されているか、改正で何がどう変わるのか、メリットやデメリットは。十分議論を尽くす時間が確保されるか。こうしたことを注視していく必要があります。

 「ある日気づいたらワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。あの手口に学んだらどうかね」。4年前になりますが、当時も今も副総理の麻生太郎氏の発言。撤回しても私は忘れません。

     *

 1951年ロンドン生まれ。大学で日本語を学び、74年に来日。ラジオやテレビの音楽番組に多数出演。近著に「ロックの英詞を読む――世界を変える歌」など。