「(社説)米ヘリ不時着 日本政府の重大な責任」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2018年1月10日05時00分)から。

 沖縄県で米軍機の事故やトラブルが頻発している。

 読谷村(よみたんそん)で8日、攻撃ヘリコプターAH1が不時着した。6日にも多用途ヘリUH1がうるま市に不時着したばかりだ。

 一昨年12月、名護市沿岸でオスプレイが不時着水して大破した。昨年10月は東村(ひがしそん)で大型ヘリCH53Eが不時着し炎上。12月には普天間飛行場に隣接する小学校の校庭に、重さ約8キロの窓を同型機が落とした。

 一つ間違えば県民を巻き込む惨事につながりかねない重大事案が、こんなにも続く。まさに異常事態である。

 小野寺防衛相はきのう、マティス米国防長官に「点検整備の徹底などの抜本的な対策」を取るよう電話で要請したが、それだけでは不十分だ。

 見逃せないのは、問題を起こした機種の幅広さである。

 専門家の間では、米国防予算の削減でパイロットの練度が下がったり、機体の整備不良が増えたりしているとの構造的な問題も指摘されている。

 事故やトラブルの原因は何なのか。実効性ある再発防止策はないのか。沖縄県民の安全と安心の確保のために、最大限の努力を尽くすことこそ日本政府の使命ではないか。

 県が求めてきたように、全米軍機の緊急総点検とその間の飛行停止、事故原因の究明・公表などを、日本政府として米軍に強く要求すべきだ。

 もう一つ注目すべきは、問題を起こした米軍機はいずれも海兵隊普天間飛行場の所属だが、事故やトラブルの現場は広いエリアに及んでいることだ。

 この事実が何を示すか。仮に普天間を名護市辺野古に移設したとしても、米軍機による危険は沖縄全土に残る。その恐れがぬぐえないという現実である。

 北朝鮮情勢の緊迫などで、日米安保体制の重要性は増している。だとしても、それに伴う負担や危険を、沖縄県民に押しつけていていいはずがない。

 ひとたび重大事故が起きれば日米安保そのものが揺らぐ。そんな現実をも見据え、沖縄の負担軽減に本気で取り組む責任が日本政府と米軍にはある。

 何より日本政府は、沖縄の声に耳を傾けようとしない姿勢をただすべきである。

 昨年末、小学校への窓落下事故の再発防止を求めるべく上京した翁長雄志知事に、安倍首相は面会しなかった。

 米軍に注文をつける形をとりながら、結局は米軍の言い分を追認し、事故やトラブルを繰り返す。そんな負の連鎖に、終止符を打たねばならない。