以下、朝日新聞デジタル版(2018年10月30日11時19分)から。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、石井啓一国土交通相は30日の閣議後会見で、沖縄県による辺野古沿岸部の埋め立て承認撤回の効力停止を決めたと発表した。防衛省は決定を受けて、8月以降止まっている工事を再開し、土砂投入に踏み切る方針だ。
沖縄県の承認撤回への対抗措置として、防衛省が行政不服審査法に基づき国交省に効力停止を申し立てていた。石井氏は効力停止を認めた理由について「普天間飛行場周辺住民の危険性の除去や騒音の被害防止を早期に実現することが困難となる。日米間の信頼関係や同盟関係に悪影響を及ぼしかねない」と説明。外交・防衛上の不利益は、効力停止の要件である「緊急の必要」にあたると話した。
行政不服審査請求は、国民が行政に対する不服を申し立てる制度で、政府機関が使うことへの批判は根強い。石井氏は「沖縄防衛局のような国の機関であっても、処分を受けた一般市民と同様に審査請求ができる」との考えを示した。
岩屋毅防衛相も閣議後会見で、同日朝に国土交通省から沖縄防衛局に効力停止の決定があったと報告を受けたことを明かしたうえで「現地の気象状況などを踏まえて、工事の再開に向けた準備が整い次第、速やかに再開させていただきたい」と述べた。
岩屋氏は辺野古移設について「抑止力を維持する一方、沖縄の負担軽減をしっかり図っていきたいという一貫した方針で進めてきた」と強調し、普天間飛行場の「一日も早い全面返還を成し遂げたい」と続けた。
西村康稔官房副長官は同日の閣議後会見で「負担軽減を目に見える形で実現するという方針を丁寧に説明し、地元の理解を得られるよう粘り強く取り組んでいく」と述べた。
防衛省は17日に、沖縄県による辺野古沿岸部の埋め立て承認撤回に対抗措置を講じた。2015年に沖縄県が承認を取り消した際と同じ手段だった。政府は当初、撤回の効力を一時的に失わせる執行停止を裁判所に申し立てる案も検討した。しかし、8月末の撤回から1カ月半がたち、政府内でも要件の「緊急性」が疑問視されたことから、3年前と同じく、行政不服審査法に基づき、「身内」の国交相への申し立てを選んだ。
一方、沖縄県では辺野古への移設計画に対する賛否を問う県民投票が来春までに行われる予定だ。ただ、県民投票には法的拘束力はないため、政府は「辺野古への移設が唯一の現実的な解決策であるとの考え方に変わりはない」(岩屋氏)として、県民投票の結果にかかわらず計画を進める考えを示している。