以下、朝日新聞デジタル版(2018年11月29日21時52分)から。
2025年大阪万博の決定を受け、大阪市の吉村洋文市長が会場までの交通アクセス整備に200億円の「カジノマネー」を投入する方針を固めた。会場の跡地利用も含め、大阪府の松井一郎知事と連携し、カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致を前提とした計画を進める構えだ。ただ、府と市の「IR頼み」の皮算用がうまくいくとは限らない。
府と市はこれまで、万博とIRの誘致をセットで進めてきた。IR予定地は大阪市湾岸部の人工島「夢洲(ゆめしま)」の万博会場に隣接。松井知事は28日の定例会見で「万博を開催している間に隣で大きな工事をやるというのは、いかがなものか」と述べ、万博開催前の24年度中にIRを開業させたい考えを改めて示した。
セット論の背景には、巨額の万博開催費用と定まらない跡地利用の問題がある。
万博開催の整備事業費は少なくとも2千億円に上るとされ、このうち夢洲への地下鉄延伸など730億円以上の関連事業費については負担方法も決まっていない。それだけに、IR事業者の資金力に期待する。
今年7月に成立したIR実施法では、カジノの設置が認められるのは全国で最大3カ所。誘致が決まれば地元自治体がIR事業者を選定する。大阪はカジノ設置が有力視されており、IR事業者のアピール合戦も過熱している。
松井知事は、事業者の選定条件として「大阪に対しての貢献」と公言。万博開催が正式に決まったのを受け、吉村市長が地下鉄延伸のために200億円の負担を求める方針を固め、事実上の選定条件とする方向で検討を開始し、貢献方法を具体化させた格好だ。
万博後の人工島の活用でも、IRが欠かせなくなっている。夢洲(390ヘクタール)のうち万博会場は南西側の155ヘクタールだが、跡地利用策は未定。府と市は、まず会場北側の70ヘクタールでIRを開業させ、万博後は段階的にIRの規模を拡大させることも検討している。
ただ、少なくとも4道府県がIR誘致に手を挙げる見通しで、大阪が選ばれると決まったわけではない。
国が来夏ごろに基本方針を示し、それに基づいて誘致に手を挙げた自治体が1年程度かけて実施方針を作成。その後、カジノ設置を決める区域認定の審査に入る日程。政府は開業時期を20年代の前半としているものの、大幅に遅れる可能性もある。府の幹部の一人は「万博の成功にはIRが大きい。一日も早くIRが来てほしい」と話す。(坂本純也)
想定されるIR開業への日程
2018年7月 IR実施法が成立
2019年夏ごろ 国土交通相がIR区域整備の基本方針を公表
2020年夏ごろ 誘致自治体が実施方針を策定
2020年代前半 国交相の審査、区域認定→大阪誘致の成否が正式決定
2025年5月 大阪万博開催