安倍政権の7年8カ月(4) 内田樹氏

以下、以下のブログ(2020年08月29日 14:13)より続き。
https://blogos.com/article/481319/

安倍政権の7年8カ月
内田樹

 感染症は全国民が等しく良質な医療を受けることができる体制を整備することでしか収束しない。しかし、安倍政権は支持者のみに選択的に利得をもたらし、反対者には「何もやらない」ことによって「一強体制」の心理的基礎を打ち固めてきた。内閣支持率が30%を超えているのに、感染対策を高く評価するものは5%しかいなかったのはそのせいである。

 安倍政権は国民を支持者と反対者に二分し、「反対者には何もやらない」ことによって権力を畏怖し、服従する国民を創り出そうとしてきた。だから、彼が権力基盤を強固にするにつれて、日本人はどんどん「リアリスト」になり、誠実や正直や公平といった「きれいごと」をおまめに鼻先でせせら笑うようになり、そしてまさにそうした態度を通じて、国際社会において誰からも真率な敬意を示されることがなくなったのである。

 人間は他者からの敬意を糧として生きる。それを失ったものは「生きている気」がしなくなる。日本人はいまそのようにして国力の衰微を味わっているのである。誰の責任でもない。