以下、ハフポスト日本版(2021年07月13日 11時59分 JST | 更新 18分前)より。
Satoko Yasuda 安田 聡子
ナンバーワンである大谷翔平選手が英語を話せないのは良くない――という趣旨の発言したコメンテーターが、謝罪した。
発言をしたのはスポーツ専門チャンネルESPNのコメンテーター、スティーブン・A・スミス氏。
スミス氏は7月12日、Twitterで「本当に申し訳ありませんでした。どんなコミュニティ、特にアジア人のコミュニティや大谷翔平選手自身を、不快にさせるつもりはありませんでした」と、大谷選手だけではなくアジア系の人たちへの謝意も伝えた。
どんな発言だったのか
MLBでベーブルース以来と言われる投打の「二刀流」に挑戦し、さらに現在ホームラン数33本とメジャートップに立つ大谷選手。アメリカのメディアは連日大谷選手の活躍を伝えており、スミス氏も7月12日に放送されたESPNの番組「First Take」で、大谷選手は「特別な選手だ」と賞賛した。
しかしその一方で「英語を話さずに通訳が必要な外国人選手は、球団の売上にとって、ある程度の痛手となる」という持論を展開。
「観客を、テレビや球場に集めて試合を見てもらおうとする時には、ナンバー1選手が通訳を必要としているということは良くない。なぜなら、本人が言おうとしていることを理解できないからです」と述べた。
この発言に対し、SNSでは「外国人差別的だ」など数多くの批判が投稿された。
スミス氏はその後、Twitterに投稿した動画で、発言は「スーパースターが英語が話せた方が、アメリカではスポーツのマーケティング戦略やプロモーションがしやすい」という趣旨だったと説明した。
しかしさらにその数時間後の投稿で次のように述べて、「大きな失言だった」と発言を悔いた。
「アフリカ系アメリカ人として、この国で多くのステレオタイプ化がもたらしたダメージをよく知っています。ですから私はもっと敏感であるべきでした」
「大谷選手はすべてのスポーツ中で、最も素晴らしいスターの一人です。彼は変化を起こす人であり、その変化にはインクルーシブさやリーダーシップが備わっている。私はそのことを賞賛すべきだったのにも関わらず、大きな失言をしてしまいました」
「アジア系コミュニティに対する、様々な暴力が問題になっている今、たとえ意図的ではなかったとしても、私のコメントは明らかに繊細さを欠いており、反省すべきものでした。それ以外に表現のしようがありません」
スミス氏は投稿の最後で「明日の朝にもう一度、きちんとした謝罪をする」と述べている。
英語を話しても通訳を介す理由
大谷選手は英語を話さないわけではなく、チームメートと英語でやりとりする。また、英語でスピーチをしたこともある。
しかしアメリカのメディアに話す時は、通訳を介している。
同じようにメジャーリーグでプレーしたイチロー選手も、地元メディアとのやりとりは通訳を介していた。その理由を2011年のスポーツプレスノースウェストのインタビューでこう語っている。
「私たちは、メディアを通してファンとつながります。そして私たちの話す言葉は心からのものでなければならなく、その心からの言葉がそのまま伝わらなければいけません」
「しかし、通訳なしでは正確に伝えられるかどうかに大きなリスクがあります。なぜなら私たちはプロ野球選手として野球をしにここに来ているのであって、言葉を学ぶために来ているわけではありませんから」
大谷選手は7月13日(現地時間)に開催されるオールスターゲームでの先発が決まっており、オールスターゲームの歴史上初めて、二刀流でプレーする。
様々な言語を話す選手が集まる大リーグで、大谷選手が新たな歴史を作っていることは、英語を第一言語にしないしない人たちをも勇気付けているはずだ。