Sly and the Family Stone の "Sing a Simple Song" (1968)

 以下、ドキュメンタリー映画「サマーオブソウル」の公式予告編。

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  現在、公開されている1969年のニューヨークのハーレム文化祭をもとにしたドキュメンタリー映画「サマーオブソウル」。

 当時のそのニューヨークのハーレム文化祭で  "Sing a Simple Song"を演奏しているSly and the Family Stone の姿が「サマーオブソウル」に映し出されている。このSly and the Family Stone  の "Sing a Simple Song"は、1968年にリリースされたシングル盤のサイドBに収録されている。カップリングのサイドAは、”Everyday People”で、こちらもハーレム文化祭で演奏されていた。

 "Sing a Simple Song"は、1968年にシングル盤で出されたのち、アルバム"Stand!"(1969)、さらに"Sly & The Family Stone"(1970)に収録されている。

 ちなみにウッドストックでも"Sing a Simple Song"を演奏している。

 シングル盤で出された"Thank You (Falettinme Be Mice Elf Again)” (1969)は、それまでのヒット曲のフレーズが多用されているが、"Sing a Simple Song"というフレーズも使われている。

 また、"Sing a Simple Song"は、さまざまなアーティストがカバーしている。

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"Stand!"(1969)

 

 

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Sly & The Family Stone Greatest Hits(1970)

 とくにSly and The Family Stone の大ファンということではないのだけれど、Sly and The Family Stone のこれらの曲は、すでに50年前。半世紀前の楽曲になるが、個人的意見を述べさせてもらえるならば、全く古びていない。そして音楽として自由が感じられて楽しい。

 その理由のひとつは、やはりマルチの楽器をあやつれるというスライのプロデュース力が大きいのではないかと思う。

 まずバンドの混成の仕方が男・女・白人・黒人と性別・人種を問わない。そうした多様な混成から、ヴォーカルも、女性・男性の、甲高い声も太い声も、いろいろな声をサンプル的に用いてプロデュースしている。厚みのある共時的なハーモニーというより、多様性の中から即時性の個性をサンプルとして引き出している印象だ。楽器編成では、ベース・ドラムスにギター・キーボード・金管楽器が、これも入れかわり立ちかわり、個性を主張しながら、全体のアンサンブルをつくっている。これらもスライのプロデュース力の賜物なのだろう。

 そういう意味では楽曲のつくり方が多様性はありながらも全体としてはシンプルで、歌詞も比較的シンプルだから、時代を越えることが簡単なのかもしれない。アルバム"Stand!"が60年代という時代性を色濃く反映しているにもかかわらず、である。もちろんアルバム"Stand!"には、「黒んぼと呼ぶなよ、白んぼ」というような、その時代にとどめておく、歴史性の閉塞を感じる唄もあるのだけれど。


 歌詞は、題名どおり、まさにシンプル。

 

 「シンプルな唄を歌おう」(Sing a simple song)と何度か繰り返されるが、これは、" S*** a S***** S*** "と頭韻をふんでいる。

 「シャワーを浴びながら歌おう 毎時間うたおう」(Sing it in the shower Sing it every hour)という歌詞は、韻をふむためにshower, hourとなっているだけで、意味をなさないナンセンスであり、音を味わうべきで日本語に訳しても意味はないのだろう。

 

 少しメッセージ性のあるフレーズでスライの言いたいことは、「最後に俺が死守しなければならないのはシンプルな唄だけということ」(All I have to hold on to is a simple song at last)。「ちょっとしたドレミファソラシドをやってみよう」(Try a little do re mi fa so la ti do)。「ドレミファソラシド」(Do re mi fa so la ti do)。

 それと、「時間は過ぎる、俺は年をとる、物事は速い」(Time is passing, I grow older, things are happening fast)。「俺は浮き沈みの人生を生きて生きて生きている」(I'm living, living, living life with all its ups and downs)。「俺は愛を与え与え与えて、しかめっ面に微笑む」(I'm giving, giving, giving love and smiling at the frowns)。「微笑むことがむずかしいときに困った状況にいるんだ」(You're in trouble when you find it's hard for you to smile)。「シンプルな唄がひょっとしてちょっとの間よくしてくれるかもしれない」(A simple song might make it better for a little while)くらいだろう。意味を感じられるところとしては。

 

 あとは、「みんな一緒に歌おう」(Everybody sing together)ということ。

 

 「君の声も聞かせて」(Let me hear you say)。

 「君の母さんといっしょに歌おう 君の母ちゃんと歌おう」(Sing it with your mother sing it Sing it, mama, sing it)。
 「君の父さんといっしょに歌おう 君の父ちゃんと歌おう」(Sing it with your father sing it Sing it, papa, sing it, sing it)。

 

 以下、YouTubeから。

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