はじめて DeepL と Bingチャット をつかってみた

 雑誌では、ChatGPTなどAIの特集が眼につくようになってきています。

 不勉強でChatGPTはまだ試したことはないのですが、最近の自動翻訳の精度は60%や70%のでき具合だと聞いたので、数日前にDeepLなるものを初めて使ってみたら、驚いた。まさに一瞬にして、日本語を英語にしたからだ。ただし、その出来具合は、印象に過ぎないが、やはり60%から70%という感じがした。

 ・たとえば人をからかうという意味で「いじる」という日本語が入っていた例文だったのだが、「(人をからかう、人にちょっかいを出すという文脈での)いじる」が「機械をいじる」と混同し混乱がみられた。

 ・過去形・現在形など、時制での間違いが見受けられた。

 ・すでに訳している箇所が付記されて重複が見られることがある。これは一度ならず、数度生じていた。

 ・「彼」と「彼女」など、代名詞の混乱が見受けられた。

 ・もともとの日本語文のあいまいさから生じていることだと思われるが、複文など複雑な文や節の場合、どちらの文や節が重要なのか、AIに判断を求めるのは酷だと感じた。

 AIにあたかも感情があるかのように感じることがあるが、もちろんAIに感情があるわけではない。AIはビッグデータから引っ張ってくるので、そこそこの訳ができる。ただし、全てを信頼するわけにはいかない。AIが本当のような顔をしてまことしやかにウソをつくというのは、本当だ。

 シリーズものの映画「釣りバカ日誌」の中で、脳裏に残っている映画の一場面*1が、はて何作目だったのか、Bingチャットを使って調べてみたら、18作目だと教えてくれた。自信たっぷりのその回答ぶりと速さに驚きつつ、「釣りバカ日誌」の18作目を早送りで見てみたがこれが全く見当たらない。

 今一度、Bingチャットに聞いてみることにした。

 18作目のどのあたりと聞くと、再び18作目のここにあると、まことしやかに答えてくれる。はて、Bingチャットが答えてくれたような場面はあったかしらと疑問に思って思い直して考えてみたら、19作目であることを思い出し、19作目を見てみたら、自分の脳裏に残っていた一場面があった。

釣りバカ日誌19

 AIは、本当のような顔をしてまことしやかにウソをつくというのは、本当だと実感した次第。

 これからの教育では、ウソに騙されないちから、すなわち批判的思考力、さらには文学性が大切になってくると思う。昔から言われていることではあるけれど。

 わたしの世代は、英文法が教科*2として教えられた世代で、名詞ひとつとってみても、普通名詞、固有名詞、集合名詞、抽象名詞と、詳細にマニアックに教わったのだが、AI自動翻訳機の時代であればこそ、いよいよ英文法のちからが必要になってきたと感じる。

 ロジャー・パルバース著、上杉隼人訳「英語で読み解く賢治の世界」によれば、著者は宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の「マケズ」を Strong と訳されました*3

英語で読み解く賢治の世界

 その訳者である上杉隼人氏のブログの「ChatGPTの日英翻訳に挑戦  ー人間はAIに勝てるか?」が面白かったので、以下紹介しておく。

blog.goo.ne.

 「機械的な日英翻訳であれば、今はChatGPTなどAI翻訳で対応できるかもしれない。だが、人間の心からの喜びや悲しみを別言語に移すのは、まだしばらく人間の仕事」との意見を上杉隼人氏は述べ、「「まずAIに訳させて、それに修正をかける」という人も少なくないようだが、それではAIが最初に作り出した構文や表現に引きずられてしまう」(上杉氏)ため、氏は以下をすすめている。

日英翻訳においては「まず自分で訳す」→「ChatGPTに確認してもらう」→「自分で調整する」→「信頼できる人間のネイティブスピーカーに確認してもらう」→「自分で再調整する」の工程が必要だ。

    ということで、学びの主体性を確立するためには、やはり地道な学びが必要となるということですね。

*1:具体的には、身分証明書カードのITルームキーで自らの会長室に入室できない鈴木会長が気分を害して会社から帰ろうとする一場面。

*2:「英語B」として「作文文法」を習った。教科書は、”A Better Guide To English Usage” 著者は、安井稔・吉富一・中島敏雄・大脇新平。

*3:「この美しい祈りのような詩は、「…マケズ」と否定形で始まります。この「マケズ」を文字通りに訳せば、unyielding(屈しない)とか、not giving in to (負けない)となるかもしれません。しかし、unyielding to the rain や not giving in to the rain としてしまうと、なんだか弱い感じがしますし、このようなことばで詩を始めるのは効果的ではありません。そんなふうに訳してしまいますと、詩にならないのです。さらに言いますと、正確な翻訳とは、原文のニュアンスを余すところなく伝えるものだとすれば、unyielding to the rain も not giving in to the rain も十分な翻訳ではないと思います。(改行)日本語と英語は、言語構造がまったく違います。翻訳するときには、辞書を引いて、ただそれに相当する訳語を置き換えてやればいい、というわけではありません。翻訳はそんな単純な作業ではなく、大きな冒険なのです」(「英語で読み解く賢治の世界」p.7)