【2024東京都知事選】おいちゃん(森川信)の「効いたねぇ」と室戸半兵衛(仲代達矢)の「これまでですな」

 おいちゃん(森川信)と寅さん(渥美清)の”喧嘩”は「男はつらいよ」(山田洋次監督)の見どころの一つである。
 「男はつらいよ 第6作 純情編」(1971年)でも、夕子さん(若尾文子)の入浴をきっかけに可笑しな言い争い*1が始まり、「いいかげんにおしよ!!夕子さん(若尾文子)に聞こえたら恥ずかしいじゃないか!なんだいふたりともいい年して!」と二人の間におばちゃんが入ると、「やっぱり帰ってこないほうが良かったんじゃない!?」と、さくらは寂しそうに決め台詞を言い残して帰ってしまう。一同、思いがけないさくらのこの一言に、「さくらちゃん、怒ったよ…」とおばちゃん。間髪入れずに「謝ってこいよ…」とおいちゃん。寅があわてて追いかけて外に飛び出す時のおいちゃんのセリフが、「効いたねー!今のひと言は。バシィッと効いたねー!」である。
 私は蓮舫氏のファンであったことはかつてないが、おそらくフライングと思われる*2今回の蓮舫氏の絶妙なタイミングでの出馬会見*3を見て、個人的に拍手喝采。すぐに思い出したのが、この森川信の「効いたねー!・・・バシィッと効いたねー」というセリフである。
 昨今の自民党小池百合子氏の身の振り方*4を観察してつくづく思うことは、力は正義なりではなく、正義、みんなの願いが力を持ってほしいということだ。蓮舫氏の決起により、ようやくまともな普通の闘い*5になって素直に嬉しい。
 政治分析が得意なわけではないが素人目に見て小池百合子氏にはいま勝てる材料がない。こんなことは私が指摘しなくとも小池氏自身が骨身にしみて理解していることだろう*6。差別と分断、騙しの攻めのテクニックに長けた小池氏も防戦には案外弱いのではないか。したがって、私の助言としては、この際、黒澤明の「椿三十郎」(1962年)の悪役・室戸半兵衛(仲代達矢)の「これまでですな」というセリフから往生際の良さを学んでもらい、勇退してもらうのも一案だろう。ウソに嘘を重ねて晩節を汚すことはもう十二分なのではないか。これ以上晩節を汚すことはせぬほうが賢明と思うのだがどうだろうか。

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*1:夕子が風呂をもらうときの寅さんとおいちゃんのかけあいが絶妙。森川信渥美清のギャグ名場面のひとつ。本作では、また、独立しようとする博とタコ社長との間で騒動が始まる。寅を介して、はたまた誤解のもとでの大宴会。このとらやの一連の騒動を自分の暮らしと比較して「私たちの生活なんてうそだらけなのね」と涙する若尾文子がまたいい。

*2:素人ながら推測するに、候補者選考委員会から決起を求められていた蓮舫氏が、自民連敗の日曜日の選挙結果を見て決起されたのだろう。しかし、これは絶妙なタイミングという他なく、蓮舫氏の政治判断の鋭さに感服する他ないが、その一方で、候補者選考委員会との関係では委員会の正式な確認を待たずして個人プレー的に決起されたのではないかという懸念がある。ただこの点では前川喜平氏によると東京新聞のスクープにより急遽立候補表明に至ったようだ。そもそも結果オーライなのだが、組織的・民主的にことをすすめなければならないという点で今後も懸念される点だ。立憲民主党や連合の組織内での左右の引っ張り合いの中でブレなければと願うしかない。そもそも東京都は都知事だけで運用できる規模ではない。集団的・民主的・総力的な英知を結集することに成功しなければ問題解決には至らない。その意味で、離党の可能性も含めて、オール東京の結集を呼びかけた点は特筆に値する。

*3:2024年5月27日(月)【ライブ】立憲民主党・蓮舫参院議員 記者会見 都知事選出馬表明へ(2024年5月27日) - YouTube。出馬会見の蓮舫氏の論旨は明快で、「自民党を絶対に許しません」「小池都政をリセットする」と、「反自民党政治・非小池都政」という立場を明快にした。

*4:8年前に自民党都政を伏魔殿と非難して当選した都知事が今は裏金自民にすり寄っていること一つとっても、都民に対する小池氏の裏切りは明らかだ。

*5:参議院議員平野貞夫氏によれば、日本の現政権が、財界の要求を背景に統一教会創価学会を基盤とする「金権カルト政治」であるとすれば、その東京版たる、三井不動産などのゼネコンの要求を背景にした「金権カルト政治」か、民権デモクラシーかが問われている。そうした性格の東京都政における闘いではないかと強調されている。

*6:東京15区補選で、自ら立候補できず、自民党復党のもくろみ、さらに岸田のあとをねらった総裁選出馬という道すじを断たれたこと。さらに乙武氏を候補者に擁立したが惨敗という選挙結果が潮目の大きな変わり目のひとつとなった。今回蓮舫氏の決起で、小池氏は、いまだ立候補を表明していないが、都民ファ、そして自民党創価学会、さらにカルトや連合などの支援をどうとりつけるかが選挙結果を大きく左右することになるだろう。