タクシーの運転手と話をする

 タクシーに乗ると、このタクシーの運転手は、私がマッケンジーホステルを知らないかという。
 「地下鉄のリトルインディア駅に近いところで、名前をマッケンジーホステルって言うんだけど」と言っても、通りの名前がわかるとよいのだけれどと言うのだが、あいにく荷物と一緒にガイドブックをトランクに積み込んでしまった。
 「リトルインディアにあって、リトルインディア駅の近くなんだけど」と再度言って、リトルインディア駅と私が予約したホステルの位置関係を指で私は示した。
 シンガポールは、国土が狭いせいか、一方通行が多いような印象を受ける。
 物価が高いが、とくに車が高い。お酒類もタバコも高いという。
 シングル32ドルは高いと私が言うと、運転手が「お前は、どこから来たか」という。  「ニュージーランドに住んでいたけれど、そもそもは日本から」と言うと、日本人なら、そんなに高くはなかろうという調子で、運転手は私に話をした。
 日本から比べれば比較にならないかもしれないが、東京と同じようにシンガポールも消費経済だから、自分にとっては滞在費は安くはないと思っていた。それからすると、ニュージーランドは自給自足的な生活をしているから、お金がほとんどかからない。スーパーマーケットで買い物をしなくても生活ができる。野菜は作るし、魚介類も自分で採る。たまには、カモ狩りだったすることもある。親戚から牛肉をもらうことだってある。でもそんな生活は、シンガポールや東京では無理だと私は言葉を続けた。
 いまニュージーランドの銀行の利息が高いところだと、6%くらいだ。日本は低金利で、お金を銀行に置いておくこと自体が話にならない。これでよく資本主義だと言えるものだと私は言ったら、シンガポールの利息は4%くらいだと教えてくれた。
 ところで、この運転手は英語もあまりうまくない。
 大体マッケンジーホステルを知らない。
 ぐるぐると回ってしまって、普通なら12ドルくらいのところを15ドルもかかってしまった。この運転手相手に喧嘩をするのも面倒なので、そのまま大人しく私は支払った。