台湾のタクシー運転手はえらい

 それで、紹興酒が少し醒めて冷静になって考えてみたのだが、台湾で日本語が通じない、英語が通じないと馬鹿騒ぎする精神構造は一体なんなのか。
 台湾は、言うまでもなく、歴史的にみて日本の初めての植民地だった。つまり、日本語は支配者の言語である。その意味で、台湾語からすれば、日本語は大言語だ。何故日本語が通じないのかという意識は、ヘレンフォーク(支配民族)の意識である。また、英語が通じないという意識は何なのか。これも、母語でない限り、後天的に学習したものというのは、言語エリートが少なくない。つまり、台湾語からすれば、圧倒的な大言語である日本語や英語である。それが通じないと嘆くのは、かなりおかしい。まさに、理不尽である。
 仮に、日本が、あるアジアの国から支配されたとしよう。その言語が話されている国からある旅行者がやってきて、その言語が通じないと嘆くとしたらどうだろう。また、その旅行者は英語に堪能で、英語を話すとしたら、日本人はどう反応したらよいのか。もうすでにおわかりのように、そんな奴は鼻持ちならない奴ではないのか。
 今回の私が、そうした鼻持ちならない奴であったにもかかわらず、日本語も英語も話さぬ台湾の運転手たちは極めて立派な態度だった。
 鼻持ちならない輩であった私は、彼らに生かされたと言ってよい。