“The Beatles Get Back The Rooftop Concert”を劇場で観てきた

 “The Beatles Get Back The Rooftop Concert”を劇場で観てきた。

 ビートルズ解散(1970年)前年の1969年1月30日、ロンドンのアップル社の屋上でのパフォーマンスを中心に64分間にまとめたドキュメンタリー映画。ロンドン市内の屋上でのライブに対して当惑するロンドン市民の声も聞けて、音楽ドキュメンタリーであると同時に社会的ドキュメンタリーにもなっている。

 ライブパフォーマンスでは、続けてではないが“Get Back”が2回、“Don’t Let Me Down”も続けてではないが2回、“One After 909” “Dig a Pony” “I’ve Got a Feeling”の演奏を聞くことができる。

 パフォーマンスは、“Get Back”の演奏をはじめとして無駄な部分が削り落とされ、シンプルでパワフル。ビリー・プレストンのキーボードがさらに盛り立てる。演奏もさることながら、なんといってもヴォーカル。とりわけジョンとポールのヴォーカルハーモニーが素晴らしい。ビートルズが偉大なパフォーマーであることを追体験できる。

 曲目を少し紹介すると、Songfactsによれば、“Get Back”の初期のヴァージョンには"I dig no Pakistanis."(「パキスタン人は嫌いだ」)という一行が含まれていたという。自分の国に返れ(”get back”)という移民問題だ。だから“Get Back”という唄には、イギリスの移民排斥論者に対するからかいが込められている。

 “Get Back”は、ドキュメンタリー映画とアルバムのタイトルにも考えられていた。

 アルバムタイトルとしては実現しなかったが、”get back”には、1966年にツアーを止めていたビートルズがスタジオレコーディングではなく観衆の前でのライブに、いわば原点回帰の意味も込められていた。

 Jojo was a man who thought he was a loner(ジョジョは自分は一匹狼と思っていた男)
 But he knew it couldn't last(でも長くは続かないと知っていた)

 Jojo left his home in Tucson, Arizona (ジョジョアリゾナのツーソンの家を出た)

 For some California grass(カリフォルニアの大麻を求めて)

 Sweet Loretta Martin thought she was a woman(かわいいロレッタ・マーティンは女だと思っていた)
 But she was another man(でも彼女もまた男だった)

 “Get Back”は、ジョンに対して元に戻れとジョンとヨーコのことを触れているという説もあるらしい。ジョン・レノンは、1980年の雑誌プレイボーイのインタビューで”get back to where you once belonged”(「元に戻れ」)には、オノ・ヨーコをよく思っていないポール・マッカートニーの気持ちが込められていると言っている。

 Jo-joは、ポールの当時の妻リンダの元夫だとか、ジョンだとか、いろいろと解釈されているが、ポールによれば、Jo-Joは半分男性で半分女性の架空の人物だという。

 1969年1月30日、警察官がアンプのプラグを抜く前に”Get Back”は、3回のテイクを記録したと言われている。

 治安を乱しているという理由からライブを中止させようとする警官に対して、ポールは、おそらく面白がって、からかいの意味を込めて、アドリブで次のように歌う。

"You been out too long, Loretta! You've been playing on the roofs again! That's no good! You know your mommy doesn't like that! Oh, she's getting angry... she'll have you arrested! Get back!" (「ロレッタ、こんなに外に長くいて。お前はまた屋根で遊んでいたのかい。だめじゃないか。お前の母さんが嫌がってるのを知っているんだろ。母さんは怒っているよ。母さんはお前を逮捕させるよ。戻りなさい」)

 “Get Back”のテイクで、ジョン・レノンの"I'd like to say thank you on behalf of the group and ourselves, and I hope we've passed the audition."(「グループと私たち自身を代表してお礼を言いたいと思います。そして、オーディションを合格したと思うんですけど」)というMCもこの屋上ライブコンサートから採られている。

 

 “Don’t Let Me Down”は、オノ・ヨーコに捧げた唄。

 非文法の do, done の使い方。ジョンの歌い方(発音)にも注目したい。屋上コンサートでは、ライブを中断させようとする警察官に対して、”Don’t Let Me Down”(俺をがっかりさせないで)、”Get Back”(帰れ)とポールとジョンが歌っているので、また文脈の違う意味合いが出て面白かった。

 

 “One After 909”は、ジョン・レノンが1959年に書いた唄で、ジョンの初期の曲目のうちのひとつ。

 "One After 909" is about a lady who tells her boyfriend she is leaving on the train that leaves after train number 909. He begs her not to go, but she does anyway. He packs his bags and rushes after her and discovers that she is not on "the one after 909," so he goes home depressed and goes into the wrong house. ("One After 909"は、909号のあとの列車で出発しますとボーイフレンドに伝える女性の唄。彼は行かないでと彼女に懇願するが、彼女は出て行ってしまう。彼は荷物をまとめて彼女の後を追うが、909号のあとの列車に乗っていないことを知る。彼は失意のまま家に帰るが、家を間違えてしまう)*1

 

 “Dig a Pony”は、“I Am the Walrus”(「俺はセイウチ」)同様に、ジョン・レノンのノンセンスソング。

 

 “I’ve Got a Feeling”は、ポールの"I've Got a Feeling" とジョンの"Everybody Had a Hard Year"を組み合わせた唄。

 

 よく知られた伝説の"The Rooftop Concert"を劇場で観ることができ、ビートルズに出合うことができて良かった。

 

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 レヴューはたくさんあるが、以下はそのひとつ。

culturemixonline.com