アメリカ大統領選におけるカマラ・ハリス氏の敗北宣言 (concession speech)

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 トランプ氏の勝利となったアメリカ合州国の2024大統領選。

 上記動画は、カマラ・ハリス氏の敗北宣言(concession speech)。

 日本の戦後直後のアメリカ評価は、占領政策の影響も強く、敗戦を迎え、アメリカは民主主義の模範国というものであった。

アメリカ合州国」(1970)

 アメリカにとって不名誉なベトナム戦争から、本多勝一朝日新聞記者の「アメリカ合州国」(1970)というルポルタージュが発表された頃より、それまで偏向された姿が、少しはバランスのとれたアメリカ合州国の姿が見え始めてきたと言ってもよいだろう。それほど、戦後直後の、民主主義国家・アメリカ合州国というイメージは偏向し、ゆがんでいた。

 今日、アメリカ合州国がいかに模範的な社会とはいえないか。その点は、万人の認めるところだろう。思考停止になってはいけない。

 個人的には、ありえないとんでもトランプ氏*1よりもカマラ・ハリス氏のほうが数段マシとは思うが、それでも、民主党は、労働者階級の真の擁護者になることができず、またイスラエルのガザのジェノサイドに断固とした糾弾の立場をとることができていない。慶応大学・渡辺将人氏によれば、「サンダース支持者は自らの「反ヒラリー」運動がトランプ政権を誕生させたことを猛省し、二〇年には「バイデンが左傾化する」条件付きで、「元」穏健派政治家がバイデンに投票した。バイデン政権は、アフガニスタンからの撤退、キーストーン・パイプライン断念、保護貿易路線に加え、副大統領候補に「人種的少数派で女性」を選んだ。党内の政策対話による双方の「歩み寄り」ではなく、バイデン勝利と政権維持のための「しぶしぶながらの左傾化」が、のちのち禍根を招く」ことになったという*2。これでは、左派の支持が広がるはずもない*3。トランプ氏が意欲満々のなかで、本来「つなぎ」「代役」のはずだったバイデン氏が再選を目指して出馬したが、突然の候補者交代劇がおこなわれ、予備選も経ていないカマラ・ハリス氏が、結集軸を反トランプにすえて闘うこととなった。しかしながら、敗北。ハリス氏の敗北の一因は、アメリカの大衆が食料品・住宅・医療費などの高騰にあえぐ中、大衆の支持を十分に得られず、いわば”敵失”で勝利がトランプ氏に転がり込んだといえる点があるのだろう。母体保護やLGBTQの課題がインテリ層や関心の高い層には響いたが、全体としては、経済のほうが関心事となっていった。ありえないとんでもトランプ氏に反対票を投じた人たちは選挙結果に落胆・驚愕した*4

 いずれにせよ、今回の大統領選で広範囲の争点とならなかった母体保護やLGBTQ。マイノリティの権利。銃規制。暴力。自由と人権。引き続きこれらが大きな課題であることは間違いない。それに待ったなしの気候変動*5

 そして、こうした暴力的な社会・アメリカ合州国との関係を、独立国としての日本がどのようにとるべきか。誰がアメリカ大統領になるかにかかわらず、アメリカ合州国の属国的立場に甘んずることなく、日本は平和を守れるのか、主体性を発揮しうるのか、否か、問われていると言わざるをえない。

 今回の選挙結果を見ても、アメリカ合州国の劣化は否めない。だからこそ、トランプ氏の再選となったのだろう。

 日本が真の主体性を発揮できるか、否か、心底、問われている。

 上記の演説全文として、以下、ハフポストのものをあげておく。

www.huffingtonpost.jp

*1:トランプ氏を批判する有名人は、芸能人でも、俳優のジョージ・クルーニージム・キャリーメリル・ストリープロバート・デニーロなどが知られる。また小説家のスティーヴン・キングら、反トランプを明確にしている有名人は、ミュージシャンにも少なくない。

*2:渡辺将人「「大統領候補ハリス」と民主党の分断」(外交 Vol.87 Sep./Ict.2024)

*3:「ハリス大敗は当然の帰結」──米左派のバーニー・サンダース上院議員が吠える(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース

*4:たとえば、Colbert Late Show や Jimmy Kimmel Live! など、反トランプを鮮明に示してきた番組が今回の選挙結果を受けて落胆したという内容を放送している。

*5:トランプ氏の再選で気候変動政策がどうなるかについては、大島堅一氏の YouTube が参考になる。- YouTube