アメリカ合州国とメキシコとの国境線*1・「アメリカ・メキシコ国境」(Mexico-United States border)に多くの難民・移民希望者(migrants)が膨大に膨れ上がって押し寄せ(massive surge)混沌とした状況(crisis at the border)になっている*2。
以下は、カリフォルニアのサンディエゴ付近で、アメリカ側とメキシコ側の2つの国境の壁に閉じ込められた人たち。エル・パソなどテキサス州の国境にも大挙集まっている(historic migrant surge)ので、この人たちは全体の一部に過ぎないが、非人道的な(inhumane)人道的危機(humanitarian crisis)が進行している。合州国側で、見るに見かねた人たちがボランティアとして食料や水を供給している。
カリフォルニア州のサンディエゴ付近に加え、サン・イシードロ国境検問所、アリゾナ州のユマ、テキサス州のエルパソ・ブランウズヴィルなどの様子がテレビで報道されている。
またすでに入国した移民たちがシカゴ・デンヴァ―・ニューヨークの収容施設(shelter)にあふれて収容施設が不足している状況が生まれている。
これはトランプ政権時代の国境政策・タイトル42*3がこの5月11日に失効することから、なんとか国境を越えてアメリカ合州国に入国して保護を受けようとしている難民・移民希望者が後を絶たないためである。
アメリカ合州国側は、タイトル42の失効が、難民・移民たちにとってただちに開放政策を意味するわけではない("our border is not open")と、難民・移民を退けるための法的強化を考えている。
トランプ前政権は、不法移民を即時送還したいため、新型コロナ対策の名のもとにタイトル42を用いた。このために、即時送還された難民・移民と、強制送還された移民希望者は保護されず劣悪な環境に落とし込められ、その被害が増大している。移民手配をしてやると移民希望者に近づく不法手配者(smugglers)も後を絶たない。
民主党は、人道的視点からタイトル42に批判的だったが、パンデミックからバイデン政権はタイトル42を引き継がざるをえず、その失効を前にして揺れている。共和党は2年間の無策だとバイデン政権を批難している。
こうした国境政策が来年の次期大統領選の争点のひとつになることは間違いない。
もう40年以上も前の話になるが、グレイハウンドバスでアメリカ合州国を周遊していたとき、メキシコからリオグランデ川などの川を越えて(river crossing)背中を濡らして不法にアメリカ合州国に侵入してきた人間を「ウェットバック」というと聞いて記憶にとどめたことがあるが、実はこれは非常に排他的で差別的なため使ってはいけないタブー語のひとつになっている。
それくらいアメリカ合州国にとって、移民問題*4にからむ南の国境線は大問題なのであるが、ここ数年さらに問題は深刻化している。経済格差という分断が進む世界で、一か八か、なんとか入国できないものかと誤情報も手伝って難民・移民がアメリカ合州国の連邦政府の保護施設(asylum)を求めて怒涛のように押し寄せている。
けれども、こうしたアメリカ合州国がかかえる深刻な問題の報道に日本のメディアが消極的なのはどうしてなのか。まったく不思議だ。
以下は、The New York Timesから。
以下は、アイリッシュタイムズから。
*1:アメリカ合州国側からすると、カリフォルニア州・アリゾナ州・ニューメキシコ州・テキサス州という4つの州が隣接している。
*2:アメリカ合州国は、タイトル42失効後も、ハイチ・キューバ・ニカラグア・ベネズエラからの移民を受け入れるとしている。今回の群衆の内訳は、メキシコ人だけでなく、グアテマラ・ホンジュラス・ニカラグア・コロンビア・ベネズエラ・キューバ・エルサルバドルなど南米からも集まっている。さらに中東やトルコ・アフガニスタン・ジョージア・ヨーロッパからも来ているとCBSが報じている。
*3:タイトル42とは、そもそもが1944年の公衆衛生法の一部で、外部から導入される伝染病から守るためのもの。