田中克彦「言語の思想」を再読した

「言語の思想」(1975)

 田中克彦「言語の思想」を再読した。

 初版発行年は1975年。俺のもっているものは1982年8月の第8刷のもの。

 たとえば、「漢字は人を音痴にする」の箇所では…。

私の男の子は五歳のときに、テレビはきたないことばをいっぱいしゃべっているよという発見を告げた。ウンチン(値上げ)、チン(上げ)などはヘンなことばだと聞かされても、大人の耳はそれに気づかぬよう訓練されている。我々が笑わなくてすむのは、それが立派な漢字に守られているからである。

 いったい我々は、子供たちにどんなことばを与え、かれらがどんな感じでそれを受けとっているかを想像してみたことがあるだろうか。子供の説明によると、キューキュー(箱)は、痛みの感覚に結びついていた。この子供にとってキューキュー車は、その発する啼き声の模写でもあった。(p.210)

 何度も読まなければならない本。