クライストチャーチ在住のインド人の家にお邪魔する

 モナベイルの近くまで来ると、彼の自宅が近いという。家に寄ってみませんかと誘われる。初めてお会いした人の家にお邪魔するなんて、まずは警戒しないといけないたぐいの話である。けれど、こちらは三人で、彼は一人。警戒というなら、彼の方が警戒しないといけない話である。防犯上はともかく、礼儀としてもどうかとも思ったが、彼はなかなかの紳士である。今回は、彼の申し出を受けて、お宅にお邪魔することにした。
 彼の自宅はリカートン(Ricarton)というモナベイル近くの住宅地で、クライストチャーチ市内では、どちらかといえば新興地域らしい。自宅近くのモーテルも昨年建ったものばかりだと、三軒ほど建ち並ぶ新しいモーテルを指して言った。「この辺はいい地域だから、結構込んでいて、すぐno vacancy(満室)になるよ」と、彼はつけ加えた。さらに、「クライストチャーチは、小さな空き地でも、すぐに緑を植えてパークにするんだ」と、私たちの眼の前にあるほんの小さな緑地を示しながら言った。たしかにクライストチャーチは、ガーデンシティの名にふさわしく、言われるとおり緑あふれる街である。
 自宅に案内されると、部屋は大変きれいに整頓されていた。由緒正しいのであろう、父母の写真が飾られている。「パイロットなんてすごいですね」と私が言うと、「いやぁ、たいしたことありませんよ。最近は全部機械がやってくれるから、車の運転より簡単です」と、上品に笑った。彼は、いわばリタイヤ状態で、最近は観光の仕事もボランティアでやっていたり、インド料理店でお客さんにインド文化を説明したりして過ごしているという。実際、いろいろな事に彼は詳しかった。
 彼の話では、ここクライストチャーチには、日本の資本もかなり入ってきているらしい。日本人が資本を投下してあちこち買い漁っているので、オークランドはもとより、南島の一大観光都市であるクイーンズタウンなどでも、日本人に対する嫉妬心が少なくないようだ。けれども、ここクライストチャーチにはそうしたものは少ないのではないかと、インディジットは言った。
 「モナベイルを見てきたら、私の車でクライストチャーチを案内してあげましょう」と、さらに親切にも申し出てくれる。申し訳ない気持ちもしたが、この好意も受けることにして、約束の時間を確認して、私たちは彼の家を出た。