私は自分の名前をホワイトボードに漢字で書いて、日本は偉大な中国から学び、言語的に恩恵を受けていること。それぞれの漢字に意味があることを、マオリの子どもたちに伝えた。
私の苗字には、田の字があるのだが、この田は「窓」のように見えるが、実は「窓」ではない。何を表わしているのか、誰か分かりますかと生徒に問いた。
当然マオリの生徒にはわからないが、積極的にいろいろと答えて来る。私はひとつひとつの答えに対してカオ(いいえ)と言って、「米に関係します」と、ヒントを与えた。もちろん、正解は、「田んぼ」(rice paddies)である。
日本人にとって米は常食であり、食文化の中心をしめる大事なものである。それは、ちょうどマオリにとってのクマラ(さつまいも)に当たり、ネイティブアメリカンにとってのトウモロコシに他ならないであろうと、私は続けた。
続いて、ひらがなと、カタカナの仕組みの説明に移った。
マオリ語の母音は、アエイオウであること。日本語の母音は、アイウエオであり、順番が違うだけであることを、マオリの子どもたちに伝えた。
母音と子音の組み合わせで、アイウエオ、カキクケコ、サシスセソと、系統的・組織的であることから、母音の発音は簡単であることも伝えた*1。
さらに、日本語は、漢字とひらがなと、カタカナの三つがあるから、「マオリ語は簡単ですよね」と、教師らしく、マオリの子どもたちに勉強を促すような話をつけ加えた。