安倍晋三殺害事件から一ヶ月以上が経った。
日本の政治から統一協会の影響を根絶させる課題は、自民党議員の「言い訳」*1も多く、始まったともまだ言えない状況だ。
2週間以上も前に本ブログで、疑問形を多用し、少し遠慮した表現で安倍元首相の国葬に反対表明をした。
容疑者の蛮行はけっして許されないが、殺害事件についても、「自分が子どもの頃であれば、周囲の大人たちは、身から出たサビとか、自業自得、因果応報というコトバで表現したことだろう」と、直接的な表現を避けた。
けれども、連日の報道に接する限り、以上を否定する材料はないどころか、ますます説得力をもってきていると言わざるをえない。
1970年代当初より、統一協会は、集団結婚や霊感商法、数々の人権侵害などですでに社会的に広く知られるところとなり*2、裁判の判例*3によって明らかされている反社会的団体。「政治の力」によって、報道されない長い空白期間からここのところその正体が隠されてきていたが、安倍晋三元首相の殺害事件から、事件の背景が探められ、また元信者や家族の証言によって被害実態*4も再報道され始め、さらには安倍晋三元首相という権力中枢との蜜月関係の暴露と、これまで暗闇にあったものが一挙に明るみに出始めた*5。
勝共連合・統一協会と日本の権力の中枢との関係は戦後日本史で知られているところではあったが、日本の政治の中枢にこれほどまで統一協会が食い込んでいたのかと広く知られるところとなった。
こうした中で、安倍晋三元首相と統一協会との関係は、統一協会の広告塔どころか、統一協会とズブズブの関係だったということが明らかとなってきている*6*7。
自民党と統一協会との関係も、たしかに茂木幹事長が言うように*8協定書を取り交わすような(公開可能で正式な)組織的な関係ではないにせよ、自民党、とりわけ清和会と統一協会の「下部組織」、もしかすると「上部組織」で自民党がフロントかと思うほど、その実態は癒着している*9。自民党の選挙活動で、統一協会側から当選するための票と秘書派遣にはじめ選挙活動のマンパワーが期待する関係にあったとすれば、まさに「政治の力」によって、統一協会が公安の監視対象リストからはずされ、名前も変更でき、社会的・政治的に放置許容されてきたこと*10も容易に理解できる。権力維持を目的として、もちつもたれつの関係を築いてきたということなのだろう。岸田首相は、支持率低下に歯止めをかけるため内閣改造をしたが、統一協会との関係を一掃できない派閥統制のための組閣となった*11。
安倍晋三は、岸信介*12*13・安倍晋太郎のレガシーを受け継ぎ*14、若い時分ときに躊躇することがあったかもしれないが、選挙に勝つためには、「毒」と知りながら「毒」をくらい、統一協会を利用したのだろう。選挙の顔として、選挙に強い「結果」を残し、安倍一強を作り上げたことから推測しても、安倍元首相が統一協会と自民党との橋渡し役を担ったことは想像に難くない。当然のことながら、それは同時に、安倍晋三が統一協会から利用される関係ともなった。権力の中枢に庇護され、「自民党、とりわけ清和会と統一協会の「下部組織」、もしかすると「上部組織」で自民党がフロントかと思うほど、その実態は癒着している」と先に書いたように、その思想も、反共、選択制夫婦別姓反対、同性婚反対、古い家父長制擁護、性教育バッシング、憲法改正(改悪)など、自民党と統一協会の思想が響き合うのも当然の帰結であろう。統一協会の草の根の活動として、「世界平和統一家庭連合」という名で、市町村の社会福祉協議会*15や市議会、市民活動に食い込もうとしてきたのも当然の帰着であろう。統一協会に「世界平和統一家庭連合」と名称変更させことの罪は大きい。もちろんそれを認めた下村博文元文科相の責任も大きいと言わざるをえない。
これほど統一協会問題と自民党との問題が日本国内で取り沙汰されているとき、UPF(天宙平和連合)主催の大規模集会がソウルで開かれたというニュースが先週飛び込んできた。各国の要人*16が出席し、アメリカのポンぺオ・前国務長官、ペンス・アメリカ前副大統領、カナダのハーパー前首相らも参列した。安倍晋三元首相は、死後も、自分たちの信仰心は正しかったのだというお墨付きに利用されていると言わざるをえない。
安倍晋三元首相の写真が大型ビジョンに映され追悼セレモニーが始まると、トランプ前大統領がビデオメッセージで登場し、「韓鶴子総裁のすばらしい努力に感謝する」*17「安倍元首相は良き友人であり、偉大な人物であった。人々は彼を懐かしむだろう。深い哀悼の意を表する」と述べた。日本で安倍元首相の国葬問題が問題視されているさなか、さながら統一協会葬のような大がかりな追悼集会となった。
ソウルで“統一教会”大規模会合 トランプ氏がビデオメッセージで安倍元首相を追悼 | Watch (msn.com)
“統一教会”が韓国で大規模会合 安倍元首相に“献花” トランプ前大統領はビデオで…(日テレNEWS) - Yahoo!ニュース
こうしたビデオメッセージに登場するトランプ前大統領には莫大なお礼金が支払われるという。その大金は、被害者から巻き上げられた被害金に他ならない。
さらに、翌日、創始者・文鮮明の死後10年を記念した式典が開かれ一連のイベントは5日間にわたっておこなわれた。この式典には韓鶴子宛に北朝鮮の金正恩総書記から花と「文鮮明先生の逝去10周年に際して韓鶴子総裁とご遺族に深い哀悼の意を表します。民族の和解と談合、国の統一と世界の平和のため傾けた文鮮明先生の努力と功績は末永く思い出されるでしょう。文鮮明先生の遺志を引き継ぐ世界平和統一家庭連合のすべてのことがなり遂げられることを願います」と弔電*18が送られ紹介された。ポンペオ前国務長官も出席し、「韓総裁は アフリカ ヨーロッパ 中東 アジア アメリカ そして 中国 ロシア 北朝鮮の全ての指導者を集結させています。文鮮明総裁と韓鶴子総裁の平和への働きに感謝します」というスピーチをおこなった。
統一協会の霊感商法の被害者は日本が最も多く、世界的にみて日本は献金を吸い取られ貢ぐカモの役割を担っているという。「天聖教」という統一協会の教義によると、朝鮮半島は男性、日本列島は女性*19*20ということのようだ。
さて安倍政治とは何だったのか。
安倍晋三の唯一の関心事は、政治支配・権力維持しかない。だから政治支配・権力維持のためには、なんでも使う。
安倍政治は、法の支配に依拠しない。属人的ちからに依存しているから、必然的に私物化となる。そもそもが法の支配を望んではいない。その本音は、逮捕されなければよい。だから人事で支配する。人事によって法の支配も捻じ曲げる。人をだますことも、ウソをつくことも、魂を売ることもへっちゃらだ。二枚舌を使うことはお手の物だから、思想はでたらめでインチキとならざるをえない*21。ウソつきの権力者を擁護する御用文化人もたくさん必要になる。マスコミ支配のために安倍政治はいくつ毒まんじゅうを食べさせてきたのか。
これはすでにマインドコントロールといえまいか。
安倍晋三は、みずからを安倍政治のパフォーマーとして磨いてきた。パフォーマーだから、コピーもいろいろある。「美しい日本」。「日本を取り戻す」。批判的国民を「こんな人たち」呼ばわりする。「反日が五輪反対」しているという「反日」*22。
繰り返しになるが、安倍政治の政治家たちの関心事は、政治支配・権力維持・国民支配しかない。政治信条や思想信条は、ポピュリズムでその都度有権者に受けることをつまみ食いでよい。きれいごとを言うときはほぼウソ。自由と民主主義の名において、自由と民主主義を破壊するのが安倍政治だ。
なぜこうしたことになるのか。
思想史的にいえばこれは、19世紀半ば、労働者階級が歴史の担い手となると同時に、資本家階級は進歩性を失い、政治的にも、思想的にも、反動的になっていったということなのだろう*23。
自民党の背骨にある思想は、反共、反共産党。とどのつまり反民主主義。反憲法。反国民的。これは一貫していてブレはない。
「サタン」はどちらなのか。
以上の考察からすれば、容疑者の蛮行がけっして許されるものでないことは言うまでもないが、身から出たサビ。自業自得。安倍三代*24でいえば、因果応報というほかないのではないか。
日本人は、アメリカ合州国の支配*25と自民党のマインドコントロールから逃れなければならない。
そもそも国葬をおこなう法的根拠がないのだが、反日カルトとズブズブの関係であった安倍晋三。その国葬を許してはならない。国葬をおこなうことは…
第一に、政治の中枢に食い込んでいる統一協会を根絶することが政治的課題であるにもかかわらず、国葬は、安倍晋三殺害後に明らかになった統一協会と安倍晋三や自民党との関係に眼をつぶり蓋をすることになる。
第二に、国葬は、これまでよりさらに、統一協会に免罪符やお墨付きを与えることになる。(それは統一協会がなにより歓迎することだ。まさに統一協会の思う壺である)
第三に、国葬をおこなうなら、なにより被害者が救われない。
第四に、そしてなにより国葬は、個人の死に格差をもうけ、個人の内心の自由・個人の良心を踏みにじるものとなる。人の死を政治に利用することと民主主義の破壊に反対し、日本国憲法の精神にのっとって反対せざるをえない。
日本の政治の中枢に食い込んでいる統一協会を日本の政治から根絶するには統一協会に免罪符を与える国葬をしてはならない。統一協会を日本の政治の中枢から末端に至るまで根絶やしにすることがまさに日本の緊急課題であるのだから。
*1:第219回:統一教会関係議員の「言い訳」集(鈴木耕) | マガジン9 (maga9.jp)
*2:半世紀前から国会で追及されていた「統一教会」 1970年代の「国会審議」(辺真一) - 個人 - Yahoo!ニュース
*3:統一教会 霊感商法の実態 全国霊感商法対策弁護士連絡会 (stopreikan.com)
*4:祝福2世だった女性が見た旧統一教会会見「それがあれば先祖が家に住める...が霊感商法じゃなかったら何が霊感商法なんだろう」(MBSニュース) - Yahoo!ニュース
*5:下村博文氏・萩生田氏ら多くの自民党議員と統一協会との関係が報道されている。【統一教会】旧統一教会とカネのやりとり「政治家15人」の名前 下村元文科相は献金受け取り、会費も支出|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com) さらに統一協会(文鮮明)と立正佼成会(庭野会長)との関係も出てきている。
*6:統一教会は安倍晋三元首相の「雨天の友」だった | 文春オンライン (bunshun.jp)
*7:安倍晋三、統一教会との蜜月を笑顔でカミングアウト。イベント登壇&韓鶴子総裁を称賛で本性あらわ、「票とカネ」目的の歪な関係 - まぐまぐニュース! (mag2.com)
*8:これは茂木幹事長の発言をよしとして認めているわけではない。協定書を取り交わすというような意味で、「組織的な」関係でないことは当たり前のことで、あえてわざわざ言う必要もないことだ。「組織的な」という文句を除けば、関係があるか関係がないかの問題になって自民党と統一協会との間に関係があることは明白だから、茂木幹事長の発言はごまかしのための発言であることは明白である。きわめて悪質なごまかしというほかない。
*9:たとえば、生稲晃子議員 選挙中に統一教会の関連施設を訪問報道…接触発覚でさらに高まる不信感 (msn.com)
*10:「特異集団」は旧統一教会 公安庁報告書、安倍政権下で項目消える:朝日新聞デジタル (asahi.com)
*11:各派閥への配慮を優先、統一教会の呪縛もぬぐえず……「第二次岸田改造内閣」に難局を乗り切る力はあるのか(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース
*12:戦後、アメリカ合州国は、傀儡政権として自民党をつくった。釈放されたA級戦犯容疑者の中には、岸信介ら元閣僚、官僚、財界人、軍人のほか、笹川良一、児玉誉士夫ら、超国家主義団体の指導者たちもいた(春名幹男「秘密のファイルCIAの対日工作」上 p.335)。当初、「GHQ参謀第二部(G2、情報)は児玉を「危険人物」とみて、釈放することなどみじんも考えていなかった」(同p.348)が、「東西冷戦の深刻化で、一九四八年以降、事態は一八〇度転回する」(同p.348)。「児玉が巣鴨プリズンから釈放されて以後、米情報当局と日本の右翼の”蜜月”が始まった、と言っても言い過ぎではない」。
*13:【独自】安倍家と統一教会との“深い関係”を示す機密文書を発見 米大統領に「文鮮明の釈放」を嘆願していた岸信介 | デイリー新潮 (dailyshincho.jp)
*14:安倍晋三元首相の後継者は育たず 青木理「彼に代わる右派のアイコンは見当たらない」 (msn.com)
*15:一月万冊・今一生氏のキャンペーン参照。スクープ!全国の社会福祉協議会は、反社カルト=世界平和統一家庭連合(旧統一教会)からの寄付を受け取ってきた!それでも寄付を拒否する声明を出さず、寄付の事実を隠すこともしない!作家・今一生・一月万冊 - Bing video
*16:ブラジル前大統領、セネガル大統領、ナイジェリア大統領、リベリア大統領、イタリア元首相、スペイン元首相、フランス元首相ら。
*17:トランプ前大統領が韓鶴子を讃えるのは、マザームーンを連呼して讃えた自民党・山本朋広衆院議員と通じるものがある。
*18:「文鮮明先生のご遺族の方へ 世界平和統一家庭連合総裁の文鮮明先生の逝去10周年に際して韓鶴子総裁とご遺族に深い哀悼の意を表します。民族の和解と談合、国の統一と世界の平和のため傾けた文鮮明先生の努力と功績は末永く思い出されるでしょう。文鮮明先生の遺志を引き継ぐ世界平和統一家庭連合のすべてのことがなり遂げられることを願います」
*19:「天聖教」に、日本帝国主義の韓国キリスト教弾圧政策は実に極悪非道なものであったとして、文鮮明は「韓半島は何かといえば男でいえば生殖器です。半島です。島国は女性の陰部と同じです。日本が一九七八年から世界的な経済大国として登場したのはエバ(イブ)国家として選ばれたので(中略)日本はすべての物資を収拾して、本然の夫であるアダム国家 韓国に捧げなければならないのです」(「原理講論」)という考えを示している。
*20:文鮮明「(私が)日本をエバ国家に定めてあげなかったならば、日本はすでにぺしゃんこになっていたのです。雑多な神様を信じる民族。いわしの頭も信じる日本ではないですか。日本の経済を投入して南北を統一しなければ日本は滅びるのです。エバ国家の使命を果たすことができなければ跡形もなく消えるのです。それゆえに(中略)一家を捨てても一族が滅びても南北統一のために奮発しなければなりません」(天聖教)
*21:文鮮明は北朝鮮を訪問し北朝鮮への投資を約束している(1991年)。アメリカ国防情報局によると、文鮮明は金日成主席に4500億円を渡し、1993年には金正日総書記に3億3300万円誕生日プレゼントしたという。また、たとえば、アメリカ合州国でも、60年代・70年代に中絶に反対していなかった統一協会はキリスト教右派に取り入るために突然中絶に猛烈に反対し始めたという。つまり「時の政権に取り入るため教団は理念を変えてきた」(統一協会元幹部アレン・ウッド氏)という。「何より大事なのは権力なのです。信仰は関係ありません」「権力を手にするためにあらゆるものを利用する」(同)のが統一協会だ。
*22:「反日が五輪反対」 賛成派もあきれた安倍さんの「世界観」 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
*23:哲学者・芝田進午氏は、現代の革命思想と反動思想について、以下のように述べている。「一八四八年のヨーロッパの革命において労働者階級は政治の舞台に進出し、歴史の担い手であることを万人の眼にしめします。他方、資本家階級はもはやかつての進歩性を喪失し、歴史の舞台において反動的役割をはたすにいたります。この点を思想の面で象徴するのが一八四八年の『共産党宣言』の刊行であり、これ以後は、革命と革命の思想の担い手はブルジョワジーからプロレタリアートにうつるわけです。ブルジョア・イデオロギーは基本的には進歩的性格をもたなくなります。この点で決定的だったのは、一八七一年のパリ・コミューンでありまして、これ以後はブルジョワジーとその思想は決定的に反動的になります」(芝田進午「ベトナムと思想の問題 増補版」p.34)
*24:安倍晋三、晋太郎、岸信介「岸・安倍家3代と旧統一教会」60年の知られざる関係|NEWSポストセブン (news-postseven.com)