マインドコントロールに陥れる詐欺的ウソに騙されてはなりません

 旧統一協会自民党との関係が取りざたされる中、旧統一協会霊感商法、その手口も報道されている。

 北海道大学大学院の櫻井義秀教授によれば、旧統一協会などカルトへの勧誘セミナーでは、横の人たちとの受講生間の私語は厳禁だという。教室授業なら、「この先生の言ってること、変じゃね」といった私語を受講生に許すと、マインドコントロールがとけてしまうからなのだろう。受講者をバラバラにして、教義がよく入った受講者とよく入らなかった受講者とを分別して、よく入った受講者だけ残して、さらに一段あげたセミナーを受けさせれば効率よいからだ。

 さて先日の自民党・茂木幹事長による「旧統一教会と党は組織的な関係はない」発言には椅子から転げ落ちるほど驚いた*1。この発言、百歩譲って文書協定的な取り決めにおいて「組織的な」関係はないかもしれないが、量的には多い事例が上がってきているのだから、「旧統一教会と(自民)党は…関係はない」とはとても言えない。これ自身が、旧統一協会など、カルトによる受講者をマインドコントロールに陥れる詐欺的ウソと言えるのではないか。実態は、茂木幹事長の言辞とは真逆で、旧統一協会自民党とは少なからず関係があるのだから*2*3、反社会的団体である旧統一協会と接してきた中で、自民党はその手口を学んだのではないかと推測してしまうほどだ。以前あのナチスの手口に学んだらどうかというような発言*4*5*6もあったくらいなのだから。

 そんなことを思い出していたら、さらに一昨日、福田達夫総務会長(自民党・安倍派)から、とんでもない発言が飛び出した。総務会長記者会見でのことだ。

 「正直僕自身が個人的に全く関係がないので、何でこんな騒いでいるのか正直よくわからないというのはあります。何か本当に明確にですね、我が党が組織的にある団体から強い影響を受けてそれで政治を動かしているんであれば問題かもしれませんけど。申し訳ない。僕の今の理解の範疇だとそういういことが一切ないので、それを取り立てて問題だということが本当に何か物事を良くするのか、非常に僕は極めて疑問に思っていますし、どんなご意図でやってらっしゃるんだろうというように、正直思います。ただ単に信じてる方の母体が”統一教会”に関するところだったというぐらいのことで問題であるとか、自民党がそこの団体のですね、影響を受けて政治を動かしているというような誤解を招くようなことだけはしてほしくないなと思いますし、その上お相手の方もだいぶご迷惑なのかなと、正直思っております。正直いいます。何が問題か、僕よくわかんないです」。

 これこそ、私たちをマインドコントロールに陥れる詐欺的ウソというほかないのではないか。

 わかりました。

 自民党は、長年、旧統一協会と深いつきあいをしていく中で、権力維持のためには、国民をマインドコントロールに陥れる詐欺的ウソのつき方を深く学ばれたわけですね。あのナチスの手口に学んだらどうかねとばかりに。

 福田氏は「個人的に全く関係がない」と発言しているが、祖父の福田赳夫元首相(発言当時は大蔵省相)が、1974年5月にホテルを会場とした「希望の日 晩餐会」であの文鮮明をもちあげるスピーチ「アジアに偉大な指導者現る その名は文鮮明である」と述べたことがあるとネットで話題になっている。

 また福田氏は「なんでこんな騒いでいるのか正直よくわからない」と発言しているけれど、いま問題になっていることは、自民党が反社のカルト団体と、「やめられない・とまらない」状態から、もちつもたれつの関係、蜜月関係にはまり、量的・質的に深い関係に進行していったということではないのか。自民党からすれば、秘書・運動員などによるポスター貼り・電話かけなど、選挙活動に無償の労働力を提供してもらえるし、霊感商法で巻き上げた厖大な資金も期待できる*7

 反社のカルト団体からすれば、自民党などの代議士から社会的なお墨付きをもらってみずから反社会的団体ではないという免罪符として使いたい。さらに公安の対象から除外してもらえる、団体の名称変更など「政治のちから」を発揮してもらって擁護してもらえる。否、すでに自民党(とくに安倍派)という看板自体がカルトの隠れ蓑になっているというのが実態に近い気さえする。

 昨日*8の「報道特集」によれば、UPF(2021年9月)のイベントでは 、トランプ大統領の次に安倍元総理のビデオメッセージが披露された。これが韓国の会場からオンラインで世界に発信された。1992年の合同結婚式で日本人女性と結婚し現在韓国で暮らしている教団幹部のひとりに対する取材で、彼は、「正直私は安倍氏にかなり悪い印象を持っていた。独島(竹島)問題 慰安婦問題 教科書問題 軍国主義の復活などがあったからです」と述べ、「(ビデオメッセージを見て)大変驚いた。動画が流れることは秘密で、あの映像が流れてみんなが驚いた。安倍氏のことをよく知らなかった人や否定的に見ていた人たちが”すごくいい方だ”と言ってイメージが大きく変わった」と言っていた。まさに旧統一協会を使い旧統一協会に使われ、もちつもたれつの蜜月関係だったといえる。

 この幹部は、彼が「合同結婚式に参加したとき、中曽根元総理がビデオメッセージを送ってきた。そのことを思い出す」とも語った。

 またこの幹部は、「日本では統一教会のイメージが悪く安倍氏はメッセージを送ることに悩んだと思う。政治家として大きな負担を感じたはずだが、送ったということに対して大きな意味があると感じている」と、安倍元首相の心理を推測した。

 「報道特集」によれば、安倍元首相にビデオ出演の依頼をしたのが梶栗正義UPF-Japan会長であり、ビデオメッセージ世界発信の1か月後、「3人の元総理に打診したが、(元総理の)事務所から一体何を言われたか。結局あなたたち団体は私共の○○先生を団体の宣伝材料に使いたいだけでしょ。布教のために利用したいだけでしょ。3人の元首相からはそっぽ向かれた」という。ところが、トランプ前大統領のビデオ出演が決定すると、風向きが変わった。梶栗正義UPF-Japan会長によれば、「「先生、もしトランプがやるということになったらやっていただかなくちゃいけないけどどうか」「あぁそれなら自分も出なくちゃいけない」という話を(去年)春にやりとりしていた」「先方から「やりましょう」という答えが返ってきて私の耳に入ったのが8月24日」「この8年弱の政権下にあって6度の国政選挙において私たちが示した誠意というものもちゃんと本人が記憶していた」という。

 つまり、旧統一協会による誠意(6度の国政選挙における選挙協力と8年弱の政権維持への貢献)を安倍元首相が記憶(理解)していて*9、(躊躇していた)ビデオメッセージにサプライズ登場したということなのだろう。

 「我が党が組織的にある団体から強い影響を受けてそれで政治を動かしているんであれば問題」、また「自民党がそこの団体の影響を受けて政治を動かしているという…誤解」と福田氏は言うが、先の「報道特集」で報じられているような選挙協力があったとすれば、その影響を受けないほうが不思議と言わざるをえない。政策としても、選択制夫婦別姓に反対、同性婚に反対、家父長制的価値観から、ジェンダー・家庭のあり方のあたらしいかたちに強い拒否感を示し、また”改憲”では一致していると見る見方がある。

 「ただ単に信じてる方の母体が"統一教会”に関するところだったというぐらいのことで問題である」「お相手の方もだいぶご迷惑なのかなと正直思っております」と福田氏は言うが、統一協会は、反社会的団体として明確になっており、相手に配慮を払うような団体とはいえない。

 極めつけは、「正直いいます。何が問題か、僕よくわかんないです」である。おそらく福田氏はよくわかっているのだろう。でなければ、「よくわかんない」としたいのか。もしかすると「よくわかんない」と思い込みたいのかもしれない。そのように発言すれば、それが現実になると。であれば、それこそ言霊主義の観念論者というほかない。

 福田達夫総務会長は自分の発言について会見後にコメントを出したが、それも以下のような一読しただけではよくわからない内容だった。

 「わが党が組織的に党外の団体から強い影響を受け、それで政治が動くのであれば問題ですが、わたしの理解ではそのようなことは一切ありません。ただ、党としての問題ではなく、個人として何か抜き差しならない関係になっていて、その結果、その方の政治活動に非常に大きい影響を与えているのであれば、それは問題と思います。そのような団体とのつきあいについて何が問題かわからないという趣旨の発言ではございません」*10

 旧統一協会自民党との関係は「組織的な関係はない」というようなものではない。

 昨日の「報道特集」によれば、統一教会元信者のアレン・ウッド氏の取材で、レーガン大統領が読んでいる新聞は文鮮明がオーナーであるワシントン・タイムズ紙だけと言ったという。旧統一協会は、共和党の政治家を取り込むという点で大いに成功した。レーガン大統領・ブッシュ親子大統領・トランプ大統領、その全員が統一教会の大々的な支援を受けたという。父親ブッシュは「統一教会の信者らがいなければ選挙での勝利はなかった」と発言していたという。

 大物政治家が旧統一教会のイベントに出席したり、メッセージを送ったりする際に多額の報酬をが支払われていたこともアレン・ウッド氏は証言した。ブッシュが大統領の任期を終えて韓国に講演に行ったときは、1回のスピーチにつき、100万ドル(約1億3000万円)を支払った。レーガンにも1回100万ドル支払った。この金は洗脳されて奴隷となった若者たちから巻き上げたものだった。

 昨年旧統一教会の関連団体のイベントにトランプ前大統領もビデオメッセージを送るなど、共和党とのつながりは現在も続いているという。

 選挙協力や多額の報酬によって日本やアメリカの政界とつながりを深めた旧統一教会。ウッド氏は、(文氏は)「イデオロギーで心を掴めなければ金で買収する」と言っていた。ウッド氏によれば、「(旧統一教会は)政治団体であり、そのゴールは権力を握ること」*11。文氏は「今は自分にあらがう人も多いが、将来は自分の言葉がほとんど法律のようになるだろう」と言っていた。

 2年前のトランプ大統領支持者による連邦議会への突入事件の中に、文鮮明の息子の一人(七男)が合州国で始めたサンクチュアリ教会の信者がかかわっているということが明らかになっている。銃規制反対・同性婚反対・妊娠中絶反対などの価値観を共有し、キリスト教原理主義右派と重なり合っている。団体とのかかわりが政策に影響を与えないはずもない。

 以上は、主に昨日の「報道特集」からの情報だが、こうした正当な報道に接しない限り、自民党の先生方の騙しに簡単に騙されることになってしまうだろう。私たちをマインドコントロールに陥れる詐欺的ウソに騙されてはならない。

*1:自民党・茂木幹事長の2022年7月26日の発言。

*2:統一教会”系の会合に自民党重鎮の姿…政界との関係どこまで? 苦しみ続ける元信者「地獄への恐怖」今でも…

*3:教団を追うジャーナリストが明かす 旧統一教会 ”濃厚接触議員” (msn.com)

*4:「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に代わった。誰も気が付かなかった。あの手口に学んだらどうかね」という麻生太郎氏による2013年の発言。

*5:主張/麻生副総理の発言/国際社会に通用しない暴言だ (jcp.or.jp)

*6:半藤一利氏が気づいた麻生氏の「ナチス手口学べ」発言の真意|NEWSポストセブン (news-postseven.com)

*7:「報道特集」(2022年7月30日)が入手した内部資料によれば、日本からの献金額が莫大で、1999年度から2008年度まで、日本人信者の献金額は、年間おおむね600億円。2009年のコンプライアンス宣言以降も、変わらず600億円近くの献金を集めていた。2009年から2011年の3年間で、「感謝献金」(TD)として、毎年約200億円、日本から韓国へ送金している。さらに別の内部資料には、韓国関連財団への送金額として2013年度には132億円が送金されている。問題があって返金しなければならなくなった返金額が30億円~20億円台という額になっている。

*8:2022年7月30日。

*9:この「報道特集」で、安倍元総理がビデオメッセージを送った理由について、先の教団幹部は「政治家はたくさんの人々と接する必要があり選挙の票を意識した行動を取らざるを得ない。政治家は”多宗教人”だといわれます。票のためにキリスト教ではキリスト教徒に仏教では仏教徒のように振る舞うしかないのです」と語った。

*10:7月29日「報道ステーション」で、会見での発言について会見後に説明したコメントの一部としてアナウンサーが読み上げた内容から。

*11:この文鮮明の「ゴールは権力を握ること」というのが本質だろう。この点で、旧統一協会も自民党も共和党も変わりがないのだろう。韓国・北朝鮮・日本の権力者の奇妙な三角関係も、「ゴールは権力を握ること」といえば、すんなりと理解できることが少なくない。