即興の口頭発表で、鎌倉について話をした

鎌倉の大仏

 昨日の市民講座「イギリス語を上達させよう」の授業では、IELTS(アイエルツ)の口頭試験問題から、「生まれた町」「観光地」「交通」「フェスティバル」などの課題カードを選んで、各自が口頭発表し、その後みんなから質問を受けるというものをやった。
 「観光地」ということで、「鎌倉」をテーマにして、私は次のようなことを即興で話した。


 日本の歴史において天皇の役割は軽視できないが、この天皇の権威を使いながら、12世紀に、サムライが鎌倉という地に都をたてた。だから、鎌倉はとても小さな町だけれど、歴史的に重要な場所である。
 鎌倉には、京都のように、神社や寺がたくさんあって、中でも鎌倉の大仏はとても大きく、おそらくみなさんが行かれたら驚かれると思います。
 神社に向かう通りには、道の両側にたくさんの小さな店があって、土産ものや、おせんべや豆の専門店、カフェやレストランがあり、ショッピングも楽しいところです。


 このような発表をした後に質問を受けるのだが、講師のステファニーは、日本で7ヶ月ほどイギリス語を教えたことがあり鎌倉にも行ったことがあるようで、「この大仏はどれくらいの大きさか、わかりますか」と受講者に質問した。
 それから、「日本ではアメリカ英語が主流で、テキストや教科書はほとんど米語。イギリス英語のautumnでなしに、秋はfallだし、綴りはcolour, labourでなしに、color, laborだし」と、日本がアメリカびいきであることの説明を加えた。元校長のビルも、ホワイトボードに、アメリカ英語式の綴りを書き出す。
 日本がアメリカびいきだというのは言うまでもないことだけれど、英語を習う際にも、これをどれくらいの日本人が意識しているのかということは案外重要なことだ。
 私のスピーチに対して、まずドイツ人のカートが質問した。カートの質問は、「日本は第二次世界大戦の反省をどのようにしているのか」というものだった。第二次世界大戦に対するドイツの反省には、厳しく深いものがあるから、日本はどうなっているのかという彼の素朴な疑問なのだろう。
 私の印象では、カートはとても心の優しい奴で、詰問されたという印象は全くない。それよりも、この質問にどう答えるかだ。
 このクラスには、韓国人のシンシアはいるし、中国系マレーシア人のメアリーもいるから、下手なことは喋れない。
 私は、第二次世界大戦中に中国・朝鮮、ベトナムなどの東南アジアに日本が多大な被害を与えたこと。その反省に立って平和憲法をつくったこと。憲法九条で、軍隊を持たないこと、他国に派兵しないと誓ったことを述べた。が、イラクへの自衛隊派兵という事実のもとでは、これは全く説得力がないから、私個人はこれを憲法違反であると考えていると述べざるをえなかった。
 このクラスは「イギリス語を上達させよう」という単なる英語クラスだが、彼らを前にして日本の立場をきちんと説明できないことが歯がゆい。

 本日のこの講座のテーマだが、インド人による「祭り」の発表や、モスリムの話まで飛び出すから、話題はなんとも多文化的である。
 中華系マレーシア人のメアリーに対して、私は「バーサマレーシアの言語政策はうまく行っているのですか」と質問した。
 私の拙い理解だけれど、マレーシアは他民族国家、多言語国家で、マレー系、インド系、中国系マレーシア人がいる。国家としてこれを統合するために、多言語ではあるのだけれど、マレー語を中心にして、まとめていこうとするのがマハティール首相らを中心として推進されたのがバーサマレーシア政策である。
 メアリーによれば、学校教育において、マレー語で統合しようとするには少し無理がある。学校では、英語も禁止だ。そのこともあって、自分は子どもと一緒にニュージーランドに来たと、彼女は言った。


 日本の英語教育で、いわゆるインプット、「受信型英語」から「発信型英語」にしないといけないということで、英作文などの教科書でも、「日本文化」を説明するというのがある。悪くはないのだけれど、表現する際の具体的な相手が不在ではないかと私はずっと思い続けてきた。例えて言うならば、空に向かって、日本文化を発信するわけにはいかない。それじゃ、生徒だってしらけるばかりだろう。
 この市民講座には、インド人、ドイツ人、韓国人、マレーシア人、ハンガリー人、ブラジル人、ニュージーランド人がいて、いわばマルチカルチャリズム的に多民族的環境だ。ここで日本の発表をするとなると、環境的にいろんなことを考えずにはいられない。