運転手とあれこれ話をする

 運転手一人、客一人だから、「オーストラリア全土観光ツアー」(Allstate Scenic Tours)のこの運転手と話をしながら、これから2時間のドライブになるわけだ。彼はシドニー出身だがブリズベンが好きだという。バスのアナウンスのときには、聞きづらかった彼の英語も一対一だからだろうか、それほどでもない。軍隊出身で、ツアービジネスを始めたという。この仕事が好きだという。実際、彼はよく勉強していて説明は上手だ。ブリズベンのラミントン国立公園という観光客からすれば商品価値のあるエリアで彼は働いているわけである。毎日9時30分からラミントン国立公園に客を連れて行くのが彼の商売なわけだが、、今日は、私の送りと、いつもの定期便とを運転することになるので、大変だろう。それでも、彼はこの仕事が自分に向いているし、好きだという。
 ブリズベンの四季は、冬がちょっとで、あとは夏。シドニーとは違う。日光対策は大事だという話になって、児童にとって帽子は欠かせないという。われわれも今サングラスをかけているが、サングラスも重要だ。
 日本人の旅行客は多いかと尋ねると、それほどでもないという。ただ日本人は女の子のグループが多い印象があるとのことだ。これはロンとバーバラも言っていた。日本人女性は、英語を習いに来ている人が多いらしい。彼によれば、台湾人は英語がうまいという印象があるという。
 オーストラリアに来る旅行客はいろいろだが、アメリカ人は、中にはいい奴もいるが、テキサスから来る奴では大口を叩く奴がいるという。広大さを口で争うらしい。アメリカ人はスラップスティックな笑いが好きだが、イギリス系のジョークは間接的な場合が少なくない。だから、説明の最中にジョークを言っても、受け取ってもらえないことがあるという。ジョークは個人差があるから、冗談を言っても何が面白いのという人もいるし、面白いと取ってもらえる人もいる。その反応には、きわめて個人差が大きい。冗談を説明するほどしらけるものはないだろう。アメリカのテレビでは、ここで「笑え」(Laugh)とか、「受けて」(Applause)、「拍手して」(Clap your hands.)とディレクターが指示をするだろう、アメリカ人はあれだよと言って笑う。
 冗談といえば、ニュージーランドのモトゥエカで買ったCheck Your FlyとプリントされているTシャツを着ている際に、ブリズベンで結構ジロジロと見られた件を聞いてみた。モトゥエカはエイブルタズマン国立公園のゲートウェイの町だったから、フライフィッシングのフライとはもちろん虫の意味だが、”Your fly is open.”といえば、日本語でいうところの「社会の窓」が開いていることを指し、この場合のフライは「ズボンのチャック」という意味になる。「これって、もしかして、意味をかけているの」と運転手に聞くと、「フィッシングをやる奴なら、すぐにシャレと受け取れるだろうね。フィッシングをやらない奴には通じないと思うけど」と言う。
 西オーストラリアに自動車で行ったことがあるが、町という町、一つひとつの小川(creek)にクロコダイルいる。信じられるかいと言う。このクロコダイルで死人が出るんだとも言っていた。私は、オーストラリアは広いから、一言でオーストラリアなんて言えないと思っている。メルボルン、ブリズベン、ホバートと、街によって違うから、結局オーストラリア全土をひっくるめてなんか、なかなか一般論を言えないのだ。訪問した街だけに限ってしかモノは言えないのだろう。
 アジア人に職業が奪われるということで、イプスウィッチの代議士のように、日本人に対する蔑視観があるのかと率直に聞いてみた。それから、オーストラリアは、なぜ食べ物とか、ブッシュウォーキングをした後の土や泥にうるさいのかも聞いてみた。
 彼に言わせると、ベトナム人レバノン人は薬物の売人がいるので問題になっているのだと言う。日本人の売人もいると思うが、表面には出てこないという。だから、問題を起こすグループに対しては、必要な規制をしないと大変なことになるという考え方なのだ。単純な人種偏見は少ないのではないかと彼は言った。
 それから、オーストラリアでは、ドラッグ、爆発物、食べ物、この三つについてのチェックが厳しい。訓練を受けた犬が嗅ぎまわっているが、バッグに入れていたリンゴを食べ終えても、犬はチェックするはずだと言う。蜂蜜をはじめ、食べ物を東から西に移動させるのは要注意で、その罰金はものすごく高いという。正確に覚えていないが、1万5000ドルくらいの罰金を取られるのではないかと彼は言った。日本円で120万円にもなる。そんな金、訴えられても、支払能力がないだろう。「クイーンズランドからビクトリア州など南北の移動はあまり問題にならないがね」と彼はつけ加えた。
 時間通りにブリズベン空港に着いた。彼に礼を言って、別れる。彼はこれからまたラミントン国立公園に往復することになる。私は、QF025便で、11時25分ブリズベンを出発し、16時15分にオークランドに着いた。何故またオークランドに行かないといけないかというと、ディスカウントチケットの関係である。入国した国から出国しないといけないらしい。ブリズベンから日本に帰れるなら、それが一番好都合なのだが。