マオリ

ニュージーランドという呼称のもつ意味 (3)

冒頭でも触れたように、ニュージーランドとは、オランダが植民してつけたノヴァ・ゼランド(「海の土地」という意)という名称を、その後、オランダに代わって支配したイギリスが、イギリス語風に発音し直して名づけた名称に他ならない。 キャプテン・クック…

アオテアロアと日本の共通性 (2)

観光旅行先として人気が出てきているニュージーランドで、オークランドとロトルアとワイトモ洞窟の三角形を五日間ほどでまわる日本人ツアーをキーウィ(ニュージーランド人)たちは全く理解できないものとして観察しているけれど、こうした短期間の旅行であ…

アオテアロア・ニュージーランド (1)

ニュージーランドのことをマオリ語でアオテアロアというが、このアオテアロアとハワイ諸島、そしてイースター島、これらを結んだ三角地帯のことをポリネシア文化圏と呼ぶ。 現在ニュージーランドに暮らすマオリは、このポリネシアのハワイキという伝説的な場…

マオリ研究は、どこの大学が強いのか

ワイカト大学(The University of Waikato)出身のこのマオリのライブラリアンに、マオリ語の歴史をはじめとして、マオリ語研究だったら、どの大学がいいのかと最後に質問したところ、「学部によって違うが、まずはワイカト大学(The University of Waikato)…

マオリの運動にとってのMLKは、ランギヌイ=ウォーカーではないか

合州国における黒人の意味論的な闘いを私は思い出していた。 1960年代の合州国における黒人の公民権運動が日本の英語教育の教材になることは今日普通のことになっている。 公民権運動については、ウーピー=ゴールドバーグの「ロング ウォーク ホーム [VHS]…

マオリ語を強化していく基本戦略

マオリにとって英語は、仕事を得るための必要手段である。 ワイカト大学(The University of Waikato)で私がマオリ語を一緒に学んだマオリのクラスメートのように英語だけしか話せない、また英語しか話さないマオリも少なくない。 マオリの生き方として、片…

英語を話せるマオリの存在とはどういう存在なのか

現在、ニュージーランドのマオリは、例外なく英語を話すという認識が一般的である。 これは、マオリのイギリス語化は、他ならぬ学校ですすめられた経緯があるからだ。 より正確に言えば、学校でマオリ語を話したら、教師に罰せられたのだ。こうした有形・無…

ニュージーランド・アオテアロアか、アオテアロア・ニュージーランドか

ワイタンギ・デーにワイタンギで私が考えた「アオテアロアとニュージーランド」という基本概念についても、聞いてみた。 つまり、先住民であるマオリ、そのマオリのクペの妻がアオテアロアと呼んだ土地を、ヨーロッパ系白人であるオランダがノヴァ・ゼランド…

ニュージーランドをどうとらえるのか

「多民族国家として、ニュージーランドという国をどうとらえるべきか」と私が質問した際に、ニュージーランドは「二つの民族の国」(A Nation of Two Nations)であると彼は答えた。「二重文化の統治」(“Bi-cultural Governance”)であると。 A Nation of Two N…

パケハという名称について聞いてみた

まず、パケハという名称について質問をしてみた。 パケハとは、一般にヨーロッパ系白人のことを指して言うのだが、これは全部ではないのだけれど、パケハという名称をとても嫌う白人がいる。 たとえばマイケル=キングなど、私が買って読んでいる一般的歴史…

国立図書館にまた出かける

ワイカト大学(The University of Waikato)で学んだという国立図書館の若いマオリの男性ライブラリアンに会うのは、今日で3回目になる。 これまでは、30分程度くらいしか話ができなかったが、今日は1時間半ほど、いろいろと質問をすることができて、私なりに…

ワイタンギを祝う精神

さて、2月6日のワイタンギ・デーが近づいている。 ワイタンギ・デーは、いわゆるワイタンギ条約が結ばれた日という意味だ。 これを「建国記念日」と訳すのは、不正確に違いない。 ワイタンギ・デーはワイタンギ・デーであって、一時期にニュージーランドデー…

タミハナの両親の生活言語

タミハナに言わせると、マオリ語を自分のコトバとして自由自在に操れるものはマオリの中で5%くらいではないかという。まずまずマオリ語を喋れるというのは、マオリの中で20%くらいだろうと続けた。 タミハナの母親も教会に育てられ、100%英語で育ち、マオ…

マオリ土地戦争は終わっていないとタミハナは言った

「マオリ土地戦争はいつ頃終わったのか」と私はタミハナに質問した。 というのも、ニュージーランドの歴史を読んでいると、マオリの抵抗戦争という意味から当然のことなのだが、あちこち戦争だらけで、一体いつ土地戦争が終息したのか、よくわからなかったか…

アオテアロアとニュージーランド

マオリ土地戦争の話になったときに、「イギリス軍の近代的な装備の前にあって、マオリはひとたまりもなかったんだろうね」と私が同意を求めた際に、「イギリス軍は、世界でも最も強いと考えられてきた。いわば、軍隊の中の軍隊。軍隊としてのエリートである…

タミハナのこれまでの職歴

タミハナのこれまでの職歴は面白い。 まず、マオリ土地法廷(Maori Land Court)といって、マオリの土地の法廷争いの関係の仕事。マオリ審判所(Maori Tribunals)で、マオリ土地管理人(Maori land manager)として、13年間働いたという。次に、コハンガ・レオ(Ko…

ポリネシアとメラネシアは違うとタミハナは語った

この前、私があわびをご馳走になり、その代わりに私が寿司を作ってあげたナルワヒアのタミハナの家で、食事をしたあとで、タミハナと私は大いに語り合った。 マオリにとっては、彼らがハワイキと呼ぶポリネシアの故郷がある。 アオテアロアに最初に来たと言…

「ニュージーランド物語」の第2章「マオリ」(その4)を読む

初期のマオリの生活は、おそらく、今日よりも当時の方が、敵の攻撃が可能であったという意味において、子どもたちにとってより危険であったろう。けれども、家庭においては、他の家庭と同様に、愛情(aroha)を享受できていたことだろう。子どもたちは、ピピを…

「ニュージーランド物語」の第2章「マオリ」(その3)を読む

たとえばスコットランド人の氏族(clans)のように、他の人間と同様、マオリも自分達の親族に強い結びつきを感じて暮らしていた。ファーナウ(家族)*1とともに暮らし、ハプ(亜族)*2と呼ばれる、従兄弟や他の親族とともに暮らしていたのだ。この親族の最大の…

「ニュージーランド物語」の第2章「マオリ」(その2)を読む

おそらく、ニュージーランドポリネシア人の偉大なる貢献は、熱帯の生活様式を、温和で穏やかな土地に適合させたことだ。例えば、熱帯地域では、クマラ(さつまいも)*1は一年中収穫できるが、こうしたクマラは寒気に弱い。ところが、新しい地にあって、クマ…

「ニュージーランド物語」の第2章「マオリ」(その1)を読む

ニュージーランドが他の土地からかなり離れていたことから、人間が住み始める場所としては、かなり遅い方に属する場所となった。 ヨーロッパ人が来る前にニュージーランドに来た人間は、ポリネシア人だった。 ポリネシア人は、そもそもアジア人*1で、4000年…

「ニュージーランド物語」の第1章「鳥の住む大地」を読む

私のホームステイファミリーであるアレックスとジュディの長女マーガレット、その連れ合いのジェフは、高校教師だ。 そのジェフに借りた「ニュージーランド物語」*1(ジュディス=バセット、キース=シンクレア、マーシャ=ステンソン著)は、子どもを対象に…

マッスルの炊き込みご飯は少し醤油が足りなかったかもしれない

実は、寿司と一緒に、私が持ってきた電気炊飯器で、マッスルの炊き込みご飯を、同時平行的に作っていた。 新鮮なマッスルをタミハナに開けてもらって、お米をとぎ、そこに大ぶりのマッスルを何個も入れ、お醤油をさして、さらに、韓国産の干ししいたけも入れ…

タミハナからアワビをご馳走になる

アワビは好きかとタミハナが私に聞くので、もちろんと言って、日本であわびは贅沢な海産物であることを伝えた。もちろん、アワビは私の大好物のひとつである。 こうしたアワビも、ウニ同様、潮干狩り感覚で子どもたちと一緒に取ってきたものだという。場所は…

タミハナの家で、寿司をつくる

そのナルワヒアのワイカト川の辺にたっているタミハナの家に着いて、車から出ると、玄関横の野原で、タミハナと一緒にマオリの子どもたちがバケツにウニをあけていた。 見ると、作業中のタミハナの手は、ウニの黒いトゲだらけだが、再会を祝して握手をする。…

ナルワヒアにあるタミハナの家に、再度遊びに行く

マッスルを生で食べることを教えてくれたタミハナの家に再度遊びに行くことを、私は12月に約束していたのだが、急遽日本に帰国しなければならなくなったため、その約束を果たせないでいた。 タミハナとはメールで連絡を取り合っていたが、今日自宅に電話をし…

生でマッスル貝を食べた貴重なアオテアロア的体験

ナルワヒアに住んでいるタミハナとニコルは、たまたま私がマオリ土地戦争のフィールドワークで、ナルワヒア(Ngāruawāhia)を訪問している最中に偶然に出会い、その場で彼らの家にお茶に招待されて、知りあったマオリのご夫婦である。 その後、12月にもナルワ…

ジュピターの個人話を聞く

ジュピターには、5人の兄弟と、3人の姉妹がいるという。 うち二人は、コハンガ・レオの教師だそうだ。いわば言語に関する自覚的マオリであろう。 ただ、兄弟・姉妹がみな言語に関して自覚的マオリかというと、マオリ語は別にいりません、英語だけでいいとい…

ウォッカもはいって、イングランド言語史を、ジュピターにぶちまける

ジュピターが手土産に持ってきたものは、クリストブ(Kristov)というウォッカだった。 ニュージーランドでも、一日ビールの小瓶1本くらいしか飲まない私はウィスキーなどの強い酒は全く口にしない。いわゆるスピリッツをほとんど飲まない私は、「これ、ウォッ…

ジュピターに寿司を食べさせてみた

夕食の準備をしていると、ジュピターが自転車でやってきた。 まずはロサンゼルスでお世話になったジェニーの連れ合いのトニーが大好きな南島のスパイツ(Speight’s)ビールで乾杯。 つまみには、ホタテとマグロの刺身を出してあげたが、刺身醤油と、ワサビは、…